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[コメント] ぼくの瞳の光(2001/伊)

「良き運転手の心得は?」「黙るタイミングを知ることです」
町田

暖色と水色の見事に配置された首都ローマの夜景に、頻繁にしかも口早に挿入されるSF散文詩が、却ってアントニオの沈黙の、有り難味と重さを強調していて、監督のジュゼッペ・ピッチョーニ&脚本家 ウンベルト・コンタレッロは、若年ながら「トーキー映画」というものをよぉく心得ているなと、感心しきりであった。あとは宗教的崇高さを讃えた美し過ぎるBGMを、今少し素朴なものに置き換えられれば、もう完璧だったろう。

スコープサイズの画面については、全般的には充分に活かしきれているとは云えず、最初のベッドシーン直前のマリアの部屋の奥行きある引きの画と、アントニオが高速道路で下車する場面の横に滑る雲以外は、見所と呼べるような箇所は無く、ばかりか、アントニオが母子を誘って河下りをするシーンは、角度単調で空も暗く、場面転換の解放を味わうことが出来なかった。とは云え、先にも述べたとおり、『ブエノスアイレス』や『オアシス』にも通ずるような、水色の幸福を満喫出来たので、不満を感じることはなかった。モノトーンのスーツ、高級車、夜の黒と、冷凍食品、ニス塗りの家具の黄色、衣服や街灯の赤との対比は、実に見事である。今後への期待も込め、5点に限りなく近い、4点を献上させていただこう。

(評価:★4)

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