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[コメント] 海を飛ぶ夢(2004/スペイン)

”生” に満ち溢れた映画。
リア

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







”生”を 授かった者, ”生”を 享けた者, ”生”(注*)の期限を知り選択に迷う者, そして… ”死”(「尊厳死」) を選ぶ者。

(注*) 病名やはっきりとした症状は分からないけれど、徐々に体力が衰え、認知症もおき始める様なので…”生” と言うか、意識。脳。

「尊厳死」 についてそれぞれ個人の考えによって、本作に対する受け方は様々だと思う。

けれどこの映画は、心と言うより、魂に訴えるものがあった。

登場人物それぞれの心情を思うと、安易に否定や非難,賛同する事はできないと思った。

ちなみに私は 「尊厳死」 について、どちらかと言えば、”何があっても生き(脳死だったら話は別)、死を選ぶ事には反対だなー。そんなの逃げだよ、弱い人間。” と漠然と思っていた。

が、本作を観て、そんな考えは傲慢だったと思った。当事者の事を少しも考えていなかったと。

私が今、ラモン(ハビエル・バルデム) の立場だったら…あんな果てし無い問題に結論が出せるだろうか?

どんな結論を出したところで、その問題と真っ向から向き合った選択・結論ではなく、それは「逃げ」 による選択・結論になってしまう気がする。

その後、私が発するどのような言葉も、「逃げ」 ではないと自分自身に言い聞かせ、正当化させる為の御託にしかならないと、思う…残念だけど。。

だから、ラモンは強い。と心打たれ、深い感動を覚えた。

ラモンは、恐れもせず、絶望などとマイナスな事は口にせず、ただただ自由を求め、肉体や魂の解放を願い、 「尊厳死」 を選んだ。(家族やロサ(ロラ・ドゥエニャス) の事を考えると、いたたまれない気持ちになるが。。)

まぁラモンは、四肢麻痺状態になってから26年目(?)に自ら死を選ぶ事を決意したらしく、決意まで長い年月が掛かったので、私も長い年月を掛けて、「逃げ」 による選択・結論ではなく、問題と真っ向から向き合い選択できるかもしれないが。

こんな事を書いていたら、 「尊厳死」 に賛成。みたいに思われそうだが、 「尊厳死」 を選択する事は勇気ある選択だと思うが、私は今、賛成でも反対でもない。

感動はしたが、やはりその年月のラモンの心は計り知れない。乏しいなりの想像力で考えようとすると、心が張り裂けそうになるので、今はやめておこうと思考停止。ラモンの本の初版が出版される日を旅立ちの日と約束したフリアが決意を翻した時のラモンの気持ち、フリア(ベレン・ルエダ)の気持ち。唇ではなく、おでこにキスをしたロサの気持ち。ラモンの父、兄、義姉、甥ハビの気持ちも。

ラモンの父も兄もとても自然体で素晴らしく苦悩が伝わってきたけれど、特に義姉のマヌエラ(マベル・リベラ)の優しさ・哀しみが、演技と言うんじゃなくて、もぅ自然に滲み出てるって感じで…素晴らしかった!

この言葉は明らかに言う人によると思う。「生きる事は権利であって、義務じゃない」 ラモンが言うから感慨深い。いつまでも余韻を残す。

05.05.04@TOHO

(評価:★5)

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