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[コメント] リアリティ・バイツ(1994/米)

君たちほんとに痛いかい?
ymtk

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画の見どころは,リレイナ役のウィノナ・ライダーの演技力(?)だと思う。「学校ではなんでもできるかもしれないけど,社会に出ると果てしなくまぬけな頭でっかち人間」を見事に演じきってる。「もしかして,これってウィノナの地なの?」って思ったりもした。ものすごくいやな女になりきっていた。久しぶりに「やなやつだなあこいつは!」と心から思わされた。そう思わせたら演技としては成功なんではないか。

リレイナはずいぶんアホなやつだと思う。(悪い意味で)子どものまんまだ。映画の後半になると,なんか社会を知ったような気になって,トロイ(イーサン・ホーク)に向かってなんか言ったりしてるけど,浅い浅い,底が浅すぎ。たかだか数週間くらい「厳しい現実」を体験したからといって,何が身につくのか。ほんとに乏しいほんの瞬間のちょっとした苦労しかしていない。それなのに,すべてを知ってるような気になってる。かなりアホだと思う。しゃべればしゃべるほど,アホさをむき出しにしていく。表情に幼さがにじみでる。・・・繰り返して言うけど,これがウィノナの地だったら,かなりやだなあ。たぶんそんなことはないのだろうけど。自分はそうならないようにしたい。

大学生なんて,なんだかんだ言いつつ,自分は優秀だと思っている。しかし,実際は,社会にまるで適応できないただのばかなんだろうなあ。自分ではそう思っていなくても,少なくとも周囲はそういう目で見てるんだろうなあ。そんなことをつらつら思った。よく考えれば,頭がよいとは言っても,頭脳をフルに活用しているわけではない。思考能力ではなくて,ひたすら記憶力のみをフル回転させているだけではないか。

それに比べて,ヴィッキー(ジャニーン・ガラファロ)はかなりしたたかに生きていて,いい感じだ。頭はそれほどよくないのかもしれないけれど,日々の生活をこなしていく能力にたけている。

・・・しっかしなあ。こんなものをやられると,大学生がほんとにアホだと思われてしまう。でもまあそんなもんなのかなあ。なんというか,近親憎悪に近いモノを感じてしまった。学問をおさめたものというは,こんなにもオロカなのかと。願わくば社会の中においても賢い人でありたいものだ。

それと,もうひとつ思うのは,こういう映画が新しい世代の新しい感覚を代表しているということになるのかもしれないけど,そういう新しい感覚の中には,「よりよき生活を」とか「よりよきアイデンティティを」という欲求が感じられるだけで,「いかに生存していくのか」ということについての考えがほとんど見られないなあってこと。

実際,働かなくても食っていける時代になってきたのだから,そういうことでいいのかもしれないけど,でもなんか納得行かないなあって思う。こういう自分は古いんだろうね。まったりなんて生きられないというか。自分自身に生存するための能力があるくせに,自分の生存を他者に支えてもらっていて,それでもって文句をいい,よりよきものにあこがれる。なんかやな感じだなあ。

(評価:★1)

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