[コメント] エレファント(2003/米)
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誰もの記憶に刻まれる痛ましい実際にあったハイスクールの乱射事件。それをルポ形式ではなく映画作品として発表するのは非常に難しいこと。悪戯にドラマチックに脚色しても白けるし、ただ感傷的にまとめてしまっても心に響かない。本作の成功(カンヌ映画祭グランプリ)は、作品における個々のバランスの秀逸さにある。ストーリーに流れる残酷さは躊躇せず描いているのに、カメラが登場人物たちに一定の距離を終始保つ。それが特定の登場人物に思い入れせずに、淡々とした…時に詩的な独特の映像を生む。作品のフロントにモデル風のブロンドの目立つ少年(ロビンソン)を配置し、黄色いシャツでコマーシャルに目立たせる配置は非常に考えられている。彼が本作のコマーシャルな存在の様で、実は彼は観客たちの単なる案内人に過ぎない。作品を観るうちに彼の影に隠れて、本来の本作の主役である犯人の少年たち(アレックス&エリック)の狂気へ至る心情が鮮やかに描かれ見えてくる。彼等をスピーディーに追うのではなく、日常の側面から極普通に描くのが、その先を解っている観客たちの胸を余計に苦しめる。犯人の少年たちとその他の生徒たちを隔てずにキーワードとして,共に抱いている”虚しさ”や”残酷さ”を描くことで現代のアメリカの思春期像をさらりと表現もしている。ラストの、ただ空を永遠と映すアングルが、事件に対するぶつけようのない空虚感を見事に表す。忘れようとしても忘れることのない"痛み"を刻み残す作品。
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