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[コメント] 歓びの毒牙(1969/伊)

シナリオの整合性度外視のアルジェント作品ではあるが、ある程度のシーンは省かないで描かないと、犯人を明かされても理不尽な感じで終わってしまい、映画の印象を悪くする気がする。
わっこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







殺人未遂の現場を目撃した作家の男のサスペンス映画。

女性ばかりを狙った連続殺人事件の犯人と思しき人物の殺人未遂現場を目撃した主人公が犯人に命を狙われたり、脅迫されたりしながらも、独自に事件の捜査をするストーリーで、ダリオ・アルジェント特有の映像表現を展開してはいるが、内容的にはTVの2時間サスペンスドラマ・レベルにしか見えない。

イタリアの警察が目撃者の主人公のパスポートを没収してまで強制的に事件捜査に協力させようとするのは、時代背景を考慮してもちょっと無理がある気がする。ましてや外国人相手なら、本当に領事館に電話されればトラブルが起こって色々と面倒だし、普通はこんな強制はしないと思うのだが・・・。

またモロシーニ刑事が主人公サムに目撃した事件の被害者のモニカの住まいを教えるシーンがあるが、一応、目撃者とはいえ事件の犯人もしくは共犯者の可能性もあるのに、軽はずみに被害者の個人情報を明かしてしまうのもありえないと思う。

後、映画の中で科学研究で捜査をするシーンがあるが、血液検査や録音した通話記録から犯人が複数いることを特定することが可能なら、犯行現場の皮手袋に付いた指紋の採取も可能そうなのに、そういったシーンが無いのも違和感がある。

サムにしても、犯行現場で目撃した重要な何かを思い出せずにいて、最後になって凶器を犯人ではなく被害者が持っていたことを思い出す訳なのだが、警察との供述を何回も重ねていながら、犯人を対峙するまで何の取っ掛かりも思い出せないというのも変なのだが、最初の供述の後で、一度、殺されそうになり、なおかつ目撃者もいたのに、警察に通報しないで平然と自宅に戻ってしまうサムの姿勢もどうかと思う。

それと、最後に犯人が被害者だと思われていたモニカだと明かされるわけだが、モニカが犯人だとすると、今までの女性の被害者はともかく、後半の2人の男性を無抵抗でどうやって殺したのか実に不可解。

黄色のジャケットの男の場合は薬を注射したと思わせるシーンもあったが、仮にも男性相手だし、いくら油断していたとしても抵抗を受けずに済むとは思えない。カルロ殺しにしても、ジュリアも同行していて、警察が突入した後のどさくさの状況の中で犯行場所や凶器やロープの準備をして、カルロを後ろから刺し殺した上でジュリアを拘束するのは難しいと思うのだが・・・。

シナリオの整合性度外視のアルジェント作品ではあるが、ある程度のシーンは省かないで描かないと、犯人を明かされても理不尽な感じで終わってしまい、映画の印象を悪くする気がする。

(評価:★2)

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