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[コメント] BULLY(2001/米)

事件フィルムとして何となく見ていられるけど、実録モノ程度の面白さ。041225
しど

KIDS』で見られたあのリアル感が、この作品では「だから何?」というレベルに終わったのは、『KIDS』が無邪気に巣くう病気の話で、病気なら解説無しでも十分であり、ただただリアルに蔓延していく過程を描くことが凄かったのに対し、この作品の殺人では、動機を解説しないことは明らかに物語として物足りないからだろう。殺人をただ作品にするならスナッフで十分だし、そもそも、「殺人」自体、映画の大メジャーなジャンルなので、よっぽどのことをしなければ群を抜くことはできない。

ところで、いじめに関しての作品だと、私は、新藤兼人の『ブラックボード』を思い出す。いじめの関係性を十分に描いた佳作だ。いじめる側の問題、それに耐えかねるいじめられっ子達との関係性、全てが殺人によって無為に帰すラスト。

脚本家出身の新藤監督がいじめの中にみつけた「物語」と写真家出身のクラーク監督がいじめの視線を重視して作った「映像」とでは、当然、出来たモノが違う。そして、いじめには「物語」の方が似合うと思うのは、いじめというありふれた不幸は、誰もがその原因と理由を求めているからだ。映像だけで表現するには、やや困難なのかもしれない。

深刻な結果であればあるこそ、原因はささいなものであったりするいじめ。結果としての不幸など、実はどうでも良いことなんだと、この作品を見て思う。実は娯楽としての勧善懲悪物語にはいじめという構造は一般的で、そのいじめ加減をいかに描くかが作品のミソでもあり、最後の悪人が斬られるトコは、案外、「成敗」が訪れるだけで満足だったりするものだ。それを、映像側の人間である監督は気づかなかったのかもしれない。

ただ、ラストで表示される判決の重さに、日米の差を見せつけられる点が興味深い。リアル性の面白さとは、こういう所に表れるものだな。作品がリアルに負けている証拠でもある。

(評価:★2)

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