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[コメント] 12人の優しい日本人(1991/日)

鑑賞後の一言 「私は陪審員12号かな」
ぐ〜たらだんな

この映画を数年前までに観ていたら、きっと、『十二人の怒れる男』との対比でコメントを書いていたと思う。でも私が本作を初めて観た今日は2008年10月、日本の裁判員制度は7ヶ月後に始まる。必然的に自分が裁判員に選ばれた場合を思い描きながら鑑賞。特に故・加藤善博さん演じる仕切り屋の陪審員12号が気になった。12人の中で私に一番近いタイプだったから。裁判所ではでしゃばらないようにしよう、というのがこの映画から得た教訓。これからは私のような観方をする人が増えるような気がする。

ところで本作品は、優柔不断で議論の下手な「良くも悪くも日本人らしい12人」が陪審員になったらという架空の設定で描かれている。しかし実は、本作品の12人は自分の信念に従い(それが例えば早く帰りたいという理由であっても)、有罪か無罪かきちんと自分の結論を下している。それは12人に利害関係が無いから可能であり、またそれ故、12人全員一致の票決に至るまで怒涛の時間を要している。

翻って2009年から始まる日本の裁判員制度はどうか? 本作品で描かれた陪審制と最も異なるのは、票決は裁判官3人+裁判員6人の多数決(過半数5人)である点(さらに有罪判決には最低1人の裁判官が含まれることが要件となっている)。果たして裁判官3人はそれぞれ、上司と部下・先輩と後輩といったしがらみを断ち切り、自分の結論を表明出来るのか? 裁判官3人の票がまとまって動くのはあまりにナンセンス。12人の「優しい」日本人に託した方が良かったという結果にならないことを願いたい。

時代を先取りしたかのような映画に星4つ。

(評価:★4)

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