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[POV: a Point of View]
年代別ベストの不思議
50年代〜70年代の区切りは明確に感じても80年代〜2000年代の区切りはボーダレスなんだよ

A:1900年〜1940年代 B:1950年代 C:1960年代 D:1970年代 E:1980年代 F:1990年代 G:2000年代
C★5甘い生活(1960/伊=仏)60年の今を描きながら典雅で絢爛たる古典の風格をも持つ。時空の狭間から現出した異次元空間の如き狂騒世界はやがて静謐の境界線上に至るのだが、生ある者は戻るしかない。その図式的展開の強固なパワー。何十時間でも見ていたいとさえ思わせた稀代の傑作。投票
C★5気狂いピエロ(1965/仏)全てのシーンに横溢する哀感はポップな色彩と採光で皮相にも倍加され、縦横で流麗なカメラワークは運動の儚さを照射する。カリーナとの終焉が産んだ男泣きこそ繰り返し模倣され陳腐化していく先人達の遺業の中で断固としてそれを許さぬ孤高の美しさだ。投票(5)
C★5絞死刑(1968/日)制度や差別への言及を仮初とは言わぬが、大島が徹底して拘るのは「反権力」の一点。それは観客への強烈なアジテートとなり俺達を揺さぶる。技巧の冴えも突出し閉塞空間からロケへの空間転移は鮮やかの極み。ロジカルなシナリオってこういうのを言うのだ。投票(2)
C★5サイコ(1960/米)お上品ポーズをかなぐり捨て、エロスと殺戮の扇情ショーに特化し心行くまでの技巧を注ぎ込む。キャリア最高のタイミングで産まれた願望の完璧な具現。モノクロ撮影や構成の断裂という逸脱までもが映画を神格化。生な情欲と不安心理が冴える前半が特に良い。投票(2)
C★5沈黙(1963/スウェーデン)夜の静寂のホテルの1室で街路を往く戦車の地響きがグラスの水を揺らめかす異郷の緊張と違和が孤独地獄をいや増す。その映画的状況設定と担保し得る映像。嫉妬と挫折の果てに次世代に希望を託すのみだとしても生きるしかない。ベルイマン不動の最高作。投票(2)
C★5椿三十郎(1962/日)天才は枷がある方が逆説的に良い仕事が出来る。キャラの2次使用と東宝コマーシャリズムの制約は黒澤から本来無いものを奇跡的に引き出し遊び代を拡大した。そして、上乗せされた権化のようなハッタリ根性が結実する一大殺人ショウ。黒澤ベスト作。投票(2)
C★5にっぽん昆虫記(1963/日)膨大な情報量を内包しつつ小細工無しのリアリズムなアプローチで背景が醸し出される巨視感。こういう丁寧な労力でしか本物は産み出されない。あざといとも言える近代史の点描の中を始原的なストップモーションと短歌の反復を携え左幸子は駆け抜ける。投票(1)
C★5日本のいちばん長い日(1967/日)怒涛の切迫の中、抗戦・終戦の軋轢が苦渋の汗と妄信の怒声と狂気の殺戮を伴い錯綜。喜八ピークの編集テクが俯瞰の視座に結実した映画史的僥倖。局面に埋れた史実に言及する大講談で庶民不在を誹るのは筋が違う。パノラミック且つファナティックな傑作。投票(5)
C★5博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか(1964/英)基地で反共将軍が、作戦室で元ナチ博士が、コックピットでテキサス少佐が、狂った本性を発酵・醸成させる。作戦室のパンフォーカスと基地のロングの当意即妙。スコットヘイドンのタカ派演技とセラーズの天才。2つの印象的楽曲使用。全て完璧。投票(4)
C★5博奕打ち 総長賭博(1968/日)仁義の名の下に筋を通さざるを得ないことが三島が喝破したようにギリシャ悲劇めいたのっぴきならない破綻に向かっての驀進へと繋がる。笠原のロジカルすぎる構成と受けた山下の積み重ねてきた仕事が結実したため息の出るほどの折り目正しき格調。投票(1)
D★5インテリア(1978/米)神の不在と女の性というベルイマン2大要件から神学的前衛を除いたエピゴーネンだとしても姉妹、親子、そして夫婦の確執は腰が据わってドラマラスな醍醐味を満喫させる。自分本位の基準による統御は周囲を歪ませる。破綻と崩壊から新たな世界が始まる。投票
D★5鏡(1975/露)怒涛のように錯綜する個人史と国家・世界史の断片だが内省的な静謐と超現実の戦慄が交錯。母の洗髪場面の幻想味も相当なのだが何気ない草原が風でそよぐだけで内包した何かが醸し出される。タルコフスキーの到達点。以降の3作はこのイメージの使い廻し。投票
D★5ゲッタウェイ(1972/米)逆境下で強まる夫婦の絆がロードムービーの芯を成す。ゴミに埋もれて額に傷を負ったマッグローの愛おしさが2人の道行をドキュメンタルに基底。モンタージュもこなれて粋の極みだ。素晴らしく魅力的なシークェンスのみに彩られたペキンパーの最高作。投票(3)
D★5ゴッドファーザー(1972/米)マフィアによる殺戮連鎖もファミリー結束への拘泥もシチリアでの刹那な愛もそのパッションはギリシャ悲劇めいた悲愴とロジックが上塗りする。しかし、その厳格な統御から突出するブランドウィリスロータの個人スキル。映画史上の奇跡的邂逅。投票
D★5仁義なき戦い 代理戦争(1973/日)代理戦争の傀儡たる腹黒親爺どもの傍らで尖兵として対峙しつつも裏取引を画策し続ける男どものめくるめくカオス。その混沌の後方から現れた梅宮が知らぬ間に中心に居座る役者オーラの至福。シリーズ最高峰。面白くってため息が出る。投票(4)
D★5タクシードライバー(1976/米)深夜の妄想を彩る増感光量の粗粒子で映されるポン引き・少女娼婦・タクシー仲間・買春宿の親爺ら住人たちが都会の孤独地獄を弥増させる。バロックなハーマンの完璧なフィットを得てスコセッシヒッチ趣味を隠し味に深層で蠢く胎動を叩きつける。投票
D★5ダーティハリー(1971/米)銀行前の路上・教会横の屋上・スタジアムの3シークェンスは映画遺産級で、その他枚挙に遑がないほどシーゲルの演出は冴えてるのだが、この専制的で剣呑な世界を際どく寓話化する跨道橋の仁王立ちや拷問の瞬間を詠嘆する空撮の大トラックバックこそ肝。投票(5)
D★5復讐するは我にあり(1979/日)噴火寸前のマグマを押し隠した如き交わす視線の腹芸合戦を堪能する映画で主演5人の組み合わせバリエーションが堪らん。浜松シークェンス導入の手持ちカメラのライブ感を筆頭に姫田撮影はノリまくり、ワンカットの時空跳躍など今村演出は自在で応変。投票(2)
D★5ベニスに死す(1971/伊)主人公が乳白色の海を渡って辿り着いた白いホテルは、疫病の蔓延する湿った石畳の黄泉の国への入り口であった。メフィストフェレスに誘われ自壊しゆく男を豊穣なディテールをもってこれ以上ない精緻さで描く。内向するデカダンは突き抜けて至高に達する。投票(4)
D★5ミスター・グッドバーを探して(1977/米)見え透いた扇情的題材に見えるが、軽やかにニュートラルで、故に描かれる孤独も抜きんでる。息つく間もないカッティングの冴えは自走しシュールな時制の垣間からドッペルゲンガーが顕現するのだ。ダイアン・キートン代表作。投票(1)
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このPOVを気に入った人達 (4 人)イライザー7 ぱーこ tkcrows