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[POV: a Point of View]
愛憎の狭間の3人の男〜憎み切れないろくでなし〜(邦画篇)

A:大島渚 B:鈴木清順 C:北野武
A★5絞死刑(1968/日)制度や差別への言及を仮初とは言わぬが、大島が徹底して拘るのは「反権力」の一点。それは観客への強烈なアジテートとなり俺達を揺さぶる。技巧の冴えも突出し閉塞空間からロケへの空間転移は鮮やかの極み。ロジカルなシナリオってこういうのを言うのだ。投票(2)
A★5愛の亡霊(1978/日=仏)大島が政治的・社会的メッセージを枠外に置いて狂気や煩悩からも遥かな地点に咲かせた人間の絶対善性。しかし、無垢であることはそうでないものを狂わせていく。人間の救い難い性を撮影所システムの残り香を駆使して伝奇的フォークロワの中に封じ込めた。投票(1)
A★5御法度(1999/日)時に自走に任せつつ下すべき裁断は怜悧に。物語内の組織統御論と大島自身の映画製作に於けるそれが理想的に同期する。画面に漂う緊迫感は久しく無かったものだ。嘗て反駁した筈の先世代のイズムに長い道のりの果てに辿り着いたそれは驚く程黒澤的。投票(1)
A★4愛と希望の街(1959/日)殊更に斬新な主張があるわけでもないのだが、それでも別格的な印象を受けるのは、作り手の強固な意志の存在が抜きんでているからだ。人間感情の曖昧なロジックではなく幾何学的論理性のみに立脚した脚本。その蒲田イズムとの不整合こそ見物なのだ。投票(4)
A★4日本の夜と霧(1960/日)反体制闘争を描くに製作も制約を逆手に取った体制打破気分を横溢させるいう前代未聞の戦略。大島の空気を読む山師才能が全開。2世代の闘争の総括が呈示されたとも思えぬが吉沢京夫の空疎なアジテーションは或る意味50年後を予見していたかもだ。投票(2)
A★4帰って来たヨッパライ(1968/日)軽佻が底知れぬ痛みに根ざす『地下鉄のザジ』的スラプスティックを、クタール的ポップな色使いとゴダール的コラージュで彩る。全きトレースだとしても大島なりの才気ほとばしった希有作。バカ話にも『絞死刑』を経た者にしか行けない領域がある。投票
A★3太陽の墓場(1960/日)アナーキーなコンセプトは最高に良いのだが、寄せ集めの役者を散りばめた今村的混沌世界を理に勝った大島イズムが上滑りしていく。迎合し切れないそのギャップが面白いと言えば面白いが、やっぱ退屈でもあるし鬱陶しい。投票(1)
A★3日本春歌考(1967/日)春歌は切欠に過ぎず展開されるのは世代間のイデオロギーの相克。討つ側の先鋭であった大島伊丹に代弁させた討たれる側に立つというジレンマは未解決のままアナーキズムにすり替えられる。建国記念デモという時事的なモチーフを得ただけに勿体ない。投票(1)
A★3無理心中 日本の夏(1967/日)自分が誰かに殺されることにこそ意味が或るという机上の論理的モチーフを、これ又記号化されたアナーキスト達の中に投げ込み禅問答を繰り広げる。記号が記号に留まるので突き抜けないが方法論としては解る。イメージの飛躍は部分限定で好み。投票(2)
A★3愛のコリーダ(1976/日=仏)吉蔵の優しさってのが時代への厭世感から来る虚無に根ざしてるように見える。それに対して定は完全ニンフォマニアで吉蔵の心根に惹かれてるわけではなく只管にオチンチンが好きなだけ。心の底で噛合わない愛にはそそられないし、愛の不毛にも振れ行かない。投票(3)
A★3戦場のメリークリスマス(1983/英=日)崇高で毅然とした魂の相克を描くに同性愛への越境はいいとして、ならばビジュアル男優の配置は余りに芸が無い。ボウイ坂本には正味うんざり。庶民的たけしが良いだけに尚際立つ。大島らしからぬ巨視観の一方で又らしからぬ茫洋感の混在。投票(1)
A★2青春残酷物語(1960/日)体制的な全てを破壊し殉教するような覚悟はもとより論理性も見受けられず、美人局の挙げ句の痴話喧嘩では萎える。太陽族映画の理想的帰結が虚無的な『ろくでなし』であったとすればこれは虚しく自壊した変革願望。川又昂のカメラが又良くない。投票
A★2新宿泥棒日記(1969/日)多分に場当たり的であり1個の街の名を冠した巨視的視点での構築からは程遠い。アナーキーたろうとする作者の表層的ゴダール節は真のアナーキズムどころか混沌を映画的に表現するにも至っていない。ラストの騒乱のドキュメントは限りなく虚しい。投票(2)
A★2少年(1969/日)この題材を黒塗りの日の丸で規定してしまうところに大島の横暴を感じる。情緒的な泣かせと政治的な反権力指向の狭間で物語は宙に浮いて居所を失う。後者であるならよりブラックな諧謔を、前者であるなら木下イズムへの転向をだが、それはできぬ相談。投票
A★2儀式(1971/日)図式的物語に必要欠くべからざる荘厳さと強固な緊張の欠如。SEXと右翼イズムに傾倒する大島の湿った情緒が充満する。バジェットに対する戦略不在がもたらす成島戸田の最高タッグの最悪の凡庸。河原崎中村佐藤が又薄いのだ。投票(1)
B★5ツィゴイネルワイゼン(1980/日)清順の内在に根差したらしき処から降って涌いたかの如くに確固たる認識で高等遊民を描いた昭和モダニズム世界が現出した点。それが、その技法上の破綻した個性と融合し模倣を許さぬ幽幻に到達した点。孤高の男の追随不可能な映画。投票(3)
B★4ピストルオペラ(2001/日)キッチュとかポップとかでは糊塗し切れぬ残虐本質が子供じみた殺し屋1番競争を保たせる。ポリティカル脚本家とリアル志向エフェクトマンをどうひん曲げればこうなるのか不明だが画面の隅々までの気合乗り。恥ずかしい台詞と所作も江角が厚顔でクリア。投票
B★3けんかえれじい(1966/日)解体を旨とする作家が堅牢な構築に統べられ行儀は良いが平凡。なのにそれを良しとしない諧謔味が寧ろ邪魔にさえ感じ漫画チックなカット割りが浮いている。極右化しゆく青春の行く末をこそ清順流で示唆すべきが、そこは新藤の範疇に支配されたままだ。投票
B★2春婦伝(1965/日)土台ちゃんとした物語なのだから、いじくる必要もないのに、いじくってしまったケレンが煩わしくさえある。清順流の繋ぎは時と場所を選ぶと言うことじゃなかろうか。場末的廉価感は的を射るにはターゲットは限定されるということだ。投票(1)
B★2東京流れ者(1966/日)体裁だけの物語が浅薄であることは仕方ないとは言え、どこか僅かでも肩入れする思いが作り手に無けりゃ観る者は道化みたいなもんだ。キッチュな装置と設定は仄かに泥臭く弾けそこねており、結局はダラなヘタウマ映画に成り果てている。投票(3)
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このPOVを気に入った人達 (4 人)kiona そね ぽんしゅう Linus