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[あらすじ] ジョーズ(1975/米)

海岸街・アミティの沖で女性と子供の死亡事件が起きる。警察署長ブロディ(ロイ・シャイダー)はサメの仕業だと主張し海岸の閉鎖を提言するが、市長は観光収入の減少を恐れて取り合わない。そんな中沖合で体長4メートルのサメが捕獲され一件落着したように見えたが、街に生物調査にきていた海洋学者フーパー(リチャード・ドレイファス)は疑問を感じていた。そして海開きの日とうとう最悪の事態が発生してしまう。ブロディとフーパー、そして鮫ハンターのクイント(ロバート・ショー)は、怪物サメを仕留めるべく大海原へ出発した。その恐怖描写が話題を呼び大ヒット作となった。
荒馬大介

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけの解説です。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 スピルバーグ監督の大出世作となった本作だが、彼自身が「僕にとってのベトナム戦争だった」とコメントを残していることからも分かる通り、現場は修羅場と化していた。

 20世紀FOXの重役達の目に留まり監督に大抜擢されたスピルバーグは、まず脚本の完成を急いだ。原作者ピーター・ベンチュリーが書いた第一稿を「気持ち悪い」として没にし、自ら書き上げようとしたが決定稿にはならず、最後は友人の映画監督カール・ゴッドリーブに依頼する。が、それでも全てを完成しきれず、そのままクランクインを迎えてしまう。余りの事態に主演俳優3人も加わって、翌日撮る分を徹夜で仕上げて撮影するという自転車操業が続いていた。

 さらなる問題は主役となる鮫、通称“ブルース”と呼ばれた実物大の鮫のモデルだった。当初会社の重役達は本物の鮫を調教して撮影すれば良い、と考えていたが、鮫は芸を覚えられない性質。仕方なく『海底2万マイル』で巨大イカを製作した人物に依頼した……まではよかったが、ろくな動作テストが出来ないまま撮影に挑んでしまったため、“ブルース”は肝心のところで動かなくなるNGを連発。脚本の遅れ同様、スケジュールを遅らせる原因を引き起こしていた。

 スケジュールの遅れはさらなる悪循環を招く。実際の観光地でシーズン前に終わらせるはずがそのままシーズンに突入、何も無い大海原を撮るには不都合が生じてくる。“ブルース”は相変わらず調子が悪いまま。さらに撮影中、フーパーのおんぼろ船が沈んでしまうというトラブルも発生し、スタッフや出演者の間には嫌悪なムードが漂っていたという。当初300万ドルを計上していた予算が足りるはずも無く、ついに1100万ドルにまで達してしまった。まだ監督としては若手の(当時はまだ20代)スピルバーグにとってこれほど不都合なことはなく、何度も「監督を降りたい」と重役達にこぼしていた。それでも何とか完成にこぎつけたスピルバーグは、クランクアップ当日、ラストカットを撮り終わるや否や大急ぎで現場から逃げ去った。スタッフ達から鬱憤晴らしで海に放り込まれるのではないかと思って。

 だが問題は残っていた。出来上がったフィルムは天気がバラバラで、鮫は張りぼてにしか見えないカットだらけ。これを解決すべく取った手段は、鮫の出番を極力減らすこと。その為に、鮫の一人称視点を多用して恐怖感を煽らせる方法をとったのだった。

(評価:★4)

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