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[あらすじ] 狂った一頁(1926/日)

船員だった男(井上正夫)は、妻(中川芳江)と娘(飯島綾子)を捨てて外国へ渡っていた。数年後に男が帰ってくると、妻は発狂し、精神病院に収容されていた。罪悪感を覚えた彼は、病院の小使になって妻の傍にいることを選ぶ。しかし妻には彼が誰であるか分からない。娘には恋人がいたが、そんな母親のため結婚もできそうにない。いっそのこと3人で脱走して、国外ででも暮らそうと考える男だが…。[59分/モノクロ/スタンダード]
Yasu

衣笠貞之助監督は、1926年に独立プロダクション「新感覚派映画聯盟」を設立、ここで製作した本作が、この独立プロの唯一の作品となった。

当初衣笠監督は、サーカスを舞台にした老人の話を、同じく井上正夫主演で考えていたというが、その頃思い立って精神病院を見学したのをきっかけに、このストーリーを思い付いたという。新感覚派の作家である川端康成らが脚本を書き、説明字幕の全く入らない、純粋に映像のみで構成された作品として完成した。ちなみにタイトルはもともと『狂える一頁』だったが、作家横光利一の助言で変えられたそうである。

興行的には、内容の難解さのためか全くの不振で、当時の金で1万3000円の赤字になり、衣笠監督は本作の配給を担当した松竹で数本仕事をして埋め合わせすることになった。

この作品は長らくフィルムが失われたとされてきたが、1971年になってプリントが衣笠監督の自宅の蔵で偶然発見され、国内外で再公開された。この時の編集は三隅研次が行ったというが、元々の脚本が散逸しているため、編集は手探りの状態だったらしい。

なお、撮影当時のエピソードをもとに、後に川端康成は「笑わぬ男」という小説を書いている。

(評価:★3)

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