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[あらすじ] 叫びとささやき(1972/スウェーデン)

忠告:この壮絶な命の「悲鳴と跪拝」に耐え得る精神力はおありですか? ―キン、キン、チン、キン…機械的な不協和音…スクリーンを支配するくすんだ朱色…やがてカメラは、すでに死神に憑かれたような、中年女性アグネスのやつれた蒼白の顔を映し出す。朝だ。彼女は目を覚ますと、かすれ濁った呼吸と共に涙を流し水を飲む。そして、おもむろに日記を開き、ペンを走らせる。「姉と妹が、わたしを見舞いに屋敷を訪ねてくれた…」と―
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19世紀末の或るブルジョワの大邸宅を舞台に、両親の死後、屋敷を管理している独身の次女アグネスと、甲斐甲斐しく彼女と家を守る女中アンナ、そして結婚し家を出た長女カーリンと三女のマリア。それぞれの回想を織り交ぜながら、生と死の鬼気迫る「叫びとささやき」、愛と命、孤独と不安の極限を、永遠にも感じられる91分間に封じ込めた、ベルイマン監督渾身の作品。

本作は、1972年度アカデミー賞では作品賞・監督賞をはじめ5部門でノミネート、うちスヴェン・ニクヴィストが撮影賞(美しくも不安を掻き立てる赤い屋敷と、美しくもさめざめとしたスゥエーデンの緑の田園風景が印象的)を受賞。NY批評家協会賞では、作品賞・監督賞・三女マリアと母親の二役を演じたリブ・ウルマン(allcinema onlineでは何を勘違いしたか、ウルマンが病床のアグネスを演じていると書いている)が主演女優賞・脚本賞・そして撮影賞を受賞している。

この作品の、屋敷のインテリアや、過去と現在の挿入句的役割で使われる独特の「赤」は、「網膜に流れる血」をイメージしたらしく、さらに、ベルイマンの舞台演出家時代好んで取り上げたアウグスト・ストリンドベリの作品『赤い部屋』に影響を受けているのではないか、とも言われる。

また、ベルイマン・ファンを公言しているウディ・アレン監督作品『インテリア』は、特にこの作品に強い影響が見られ、白を基調としている『インテリア』は、この「赤」に対するアレン監督の「回答」であり「挑戦」なのではないか、と見る批評家もいる。

(評価:★5)

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このあらすじを気に入った人達 (11 人)Orpheus chokobo moot よちゃく uyo mal ルッコラ くたー ボイス母 ドド tredair

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