コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 宇宙戦争(2005/米)

視野を限定させることで確実に絶望へ追い込ませるスピルバーグ。それと最後に気が付いたことが一つ……。
荒馬大介

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 この映画の情報量は他の映画と比べると、実に少ないことに気付かされる。他の同種のテーマを扱ったハリウッド映画や邦画特撮モノを思い出してみれば分かるが、主人公は得てして科学者やエンジニアであったり宇宙パイロットであったりする(マスコミという手もある)。この場合、主人公は敵と対峙するか解析する立場にあるのだから、そうなると相手や自分達の情報を把握しやすくなっている。つまり主人公が知っているのであれば、我々観客も必然的に話の中で必要な情報を得ることとなるのだ。

 ところが、本作の肝となる人物は主人公のレイとその家族だけであり、話の筋は彼らの状況を追いかけているだけで、余計なものは一切描いていない。これは「一人称」とでも呼ぶべき描き方であり、傍観者どころか第三者になることもない。トライポッドを動かしている連中が何者であるかは、レイが途中で出会った人から観たり聴いたりしただけで、確実にこうだ、という説明はされていない。いやそれ以前の問題として、逃げている本人達にとっては敵が何者であろうとどうでもいいことではないのか。敵が何者かが判明したところで「ああよかった、そういうことだったのか」と安心出来るか?

 そう、本作は危機的状況下においても情報を知りえる立場に無い人間を徹底的に描いている(その代表として3人を選んだだけ)。そもそもそういった状況が現実に起きたならば、『インデペンデンス・デイ』のジェフ・ゴールドプラムウィル・スミスのような人間こそ稀有な存在であり、確実に情報を知りえるのはそういったほんの一握りの人間だけだ。本作では劇中でレイの娘が「テロ攻撃なの?!」と絶叫しているが、スピルバーグはメガホンを取るにあたって9・11を十二分に意識している。9・11のあの混乱とパニックの中で、煙を上げて崩れるWTCのすぐ下で逃げ惑っている大勢の人達が、どうやって情報を得ろというのか? 主人公を「その他大勢」の中に放り込ませるのではなく、主人公そのものが「その他大勢」のうちの一人であるという点で、この映画は他の宇宙人侵略モノとは一味違う作品に仕上がっている。

 だとすると、トライポッドにレイが娘共々拿捕されてしまうところまではよかったが、その前に手に入れていた手榴弾で撃破してしまう、というくだりは、そういう観点から見ると余計だったのではないか。原作やジョージ・パル版でもそんな場面は無いのだから、異星人と遭遇するまでで留めておけば、と思ってしまう。とはいえその原作及びパル版への敬意は随所に見られ、OPやEDのナレーション、トライポッドが放つ光線、異星人の探査カメラとの遭遇などのシーンでは、前の『宇宙戦争』を鑑賞した人ならば思わずニヤリとしてしまうこと請け合いだろう。

 ……さて、本編終了後に流れるエンドクレジットを見ていてフト気が付いた。劇中に使用された音楽が表記されていたのだが、その中にこんなのがあった。

“SAILOR MOON BGM”

ARISAWA TAKANORI

 え?

 ええ?

 えええ?

 どこで?! 一体どこでセーラームーンのBGMが使われていたというんだ?! スピルバーグの映画で使われるようになるなんて、セーラームーンは凄いなぁ(笑)。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (24 人)Orpheus G31[*] ハム[*] FreeSize[*] Carol Anne[*] ペンクロフ[*] 空イグアナ[*] パッチ[*] Osuone.B.Gloss[*] ぽんしゅう[*] tredair 緑雨[*] HW[*] スパルタのキツネ[*] けにろん[*] おーい粗茶[*] torinoshield[*] 甘崎庵[*] kiona[*] トシ[*] mal[*] すやすや[*] evergreen アルシュ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。