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[コメント] 史上最大の作戦(1962/米)

CGがどんなに頑張っても描くことの出来ない「本物」の空気。
荒馬大介

 そのスケールの大きさを感じさせてくれるアングルやエキストラの多さには、感動すら覚えた。

 例えば、何千何万という兵士で埋め尽くされたノルマンディー海岸の上空を、ドイツ軍の戦闘機がかすめるように飛んでいくというシーン。実際にあったエピソードの映像化なのだが、これを現在再現しようとすれば間違いなくCGが使われるはずだ。まず海岸線を空撮し、そこにエキストラ兵士の素材映像、爆発の素材映像、立ち込める煙の素材映像等を組み合わせてようやく一つの場面が完成する。これも十分凄いし立派な映像技術だと思うが、結局のところは擬似空間内に再現しただけであり、最終的にはその処理に時間と金をどれだけ注いだか、ということになる。

 しかし、本作ではこんなシーンを撮るために、全てを“実際に”再現していたのである。実際に存在する海岸の上に、実際に沢山のエキストラを立たせ、実際に爆発させて煙を焚く。それを上空からカメラで捉えて、ようやく一つの場面が完成するのだ。無論現在ならば、実際にやるよりもCGで作ったほうがはるかに安く短期間で出来るというメリットも存在する。しかしそんな技術が無い時代において、取りえる手段は一つしかない。しかもそれをただ撮ればいいのではなく、いかに迫力ある画面として成立させなければならないのだから、その苦労は如何ばかりか。

 後からCGで処理できることをいいことに、視点や画面がうるさいくらいにめまぐるしく動くような映画が多すぎる。絵としては面白いかもしれないが、果たしてそれは「本物」か? 「擬似空間内で本物そっくりに再現」したのではなく「本物で再現」することがどれだけ凄いのかを、この映画で味わって欲しい。

(評価:★5)

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