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[コメント] トラ トラ トラ!(1970/日=米)

かくして、日本そしてアメリカにとって「良い偶然」と「悪い偶然」とが重なり、今我々が知るような「真珠湾攻撃」という出来事が起きたわけだが……。
荒馬大介

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ……飛行場の戦闘機は空襲ではなく破壊工作を恐れたが為に、狭い間隔で置かれていた。日本は東南アジアから攻撃を開始するものだと思っていた。日本側の交渉決別を受けて警告を発するもハワイだけは空中状態が悪くて通じなかった。レーダーに映った機影をアメリカの爆撃機だと思ってしまった。そして日本側も、宣戦布告で通告した時間と実際の奇襲作戦の時間がずれてしまっていた。さらに叩くべき空母が不在だった……。

 何だこの「偶然」と「ずれ」の多さは。これちょっとでも違っていれば、ひょっとしたら歴史は変わっていたかもしれないではないか、と、そんなことを思わせてくれるポイントの多いこと多いこと。開戦前のエピソード描写が多く、そのほとんどが両軍隊関係のものに絞られているのが原因だろう。リチャード・フライシャー、舛田利雄そして深作欣二と、いずれもその演出に職人芸的なものを感じないが、かといって余計な要素もなく、キャストのほとんどが野郎ばかりという映画なのだから、むしろこの方が潔く、かつ正解なのかもしれない。

 そして話のウェイトは、どちらかに重点を置くわけでもなく、両者をまじえて淡々と進む。どの程度まで日本を描くかというのが気になってたが、これだけあれば十分。しかし連合艦隊のカットから始まり、山本五十六のカットで終わるという演出はちょっと意外だった。確かに、大国アメリカに対する戦争の第一歩となったのがこの真珠湾なのだから、受ける側じゃなしに攻める側の事情も描かないと、単なる被害者的視点でしか戦争を観ないという、実につまらないものになってしまうだろう。こんな視点では「だったら戦争なんかふっかけるな」という結論にしかならないのは目に見えているし、第一そんな映画が面白いか? それだけの余裕を作り出した本作のキャパの広さは誉めて良いだろう。

 そしてクライマックスは怒涛の本物志向、雷撃隊が空を飛び、飛行場を、艦隊を次々と爆撃! 実物大の飛行機が本当に爆発を起こす迫力は、CGでは出せまい(あんなに近くに人がいて大丈夫か?)。ちなみに全てが実写ではなく特撮も多用しており、担当はベテランのL・B・アボット。真珠湾爆撃はもちろんのこと、数カットながらも日本艦隊のミニチュアも登場しており、この部分を円谷英二のそれと比べてみるのも面白いかと思う。

 さて、これを観たからにはあの『パール・ハーバー』も観る必要があるのか?

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ペペロンチーノ[*] TOMIMORI[*] ひゅ〜む

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