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[コメント] 移動都市 モータルエンジン(2018/ニュージーランド=米)

いろいろ雑。原作のエピソードを追うだけで精一杯だったのか、人間関係が書けてないどころか(本来ならそれに頼るだけでも素晴らしい映画になったのかもしれない)世界観すらまともに作れていない。
月魚

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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緊張感のない構図と編集に、世界観がやや被っている『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を焼き直したかのようなジャンキーXLトム・ホルケンボルフ)の音楽が流れる冒頭で期待値がダダ下がり。

さらに(この映画のもうひとつの主人公であるはずの)移動都市ロンドンは、CGの作り込みが足りないせいか現実感(使い込んだ感じ)の欠片もなく、呆れるほどの大きさについても、例えば『スターウォーズ』の冒頭のスターデストロイヤーのような驚きは皆無で、単に人との大きさの対比だけで表現していたりと、もったいないことこの上なし。海外版予告編だと「すげー!」ってなったのに不思議不思議。飲み込まれる方の都市にいたってはまるでレゴのような質感だし。全体的に重量感がないんですよ、重量感が。キャタピラの跡が深く掘り下がってたあたりで「重いですよー」って言ってるんでしょうが、そうじゃなくて、巨大なはずの個々のパーツの動きが軽いのです。たぶんタメが足りない。なので映画館の大画面で観ようが家のテレビで観ようが、下手すりゃスマホで観ようが、この映画の評価には関係ないんじゃないかと思います。

人間関係も(原作はこれから読むので、映画のせいではない可能性もありますが)説得力は欠片もなし。「え?こんな使えない男に惚れたの?どのタイミングで惚れたの?なんで惚れたの?」ってなるくらい、関係性と気持ちの変化が全く見えず、実際トムがシュライクに殺されかけるところではむしろ「殺しちゃえ!そうすりゃ話がすいすい進むから!」って思ったくらいで、サディアスがダース・ベイダーばりに「I'm your father」ってなるところも(そうは言ってないのがせめてもの救いですが)、「はー、そうですかー」って棒読みの感想しか出てこないし、まあいろいろきちんと書かれてないにも程があるのです。サディアスの娘キャサリンやらそれを助けるトムの友人やらも、中途半端に放置されるし。

ことによったら129分って尺が中途半端なのかもです。(続編へのスケベ心は出さずに)トムとかキャサリンやらは存在すら消して100分くらいのスピーディーな映画にするか、いっそ4時間30分再編集版とかにするかの方が面白いのではないかしらん…。

あ、2点じゃないのはアナ・ファンを演じたジヘのクイーン・エメラルダスっぷりに免じてです。

<原作読了後追記> いやはや、これは原作レイプと呼ばれても仕方の無いレベル。原作の方は人物造形も複雑で、ご都合主義は感じさせず、何よりトムとヘスターが愛おしい。これって『ライラの冒険 黄金の羅針盤』と同じで、原作の豊穣な世界観や次から次へと起こるイベントを中途半端にしか刈り込めず、そして余分な人間関係を付け加えた上で、なんだか子供向けにした結果、どうでもいい映画になってしまったという感じですね。

(評価:★3)

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