[コメント] 千と千尋の神隠し(2001/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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この映画は10歳の子供たちのため、や環境破壊を憂うメッセージだ、などといわれていて、確かにその意向で作られたのかもしれないが、意図せずも宮崎駿は「青春」を描いてしまったのではないだろうか。
いろいろなことを感じ、「社会」を知り、他人と触れ合う。恋をする。悲しくなる。恐くなる。 <雨が降れば海ができる>のは心だ。 川の神がゴミを出すのは、時の流れのケガレだ。「行く川の流れは絶え」ないのに、汚れてしまう自分の「時間」。私たちは大事な時間を汚していないか?青春は輝いているか? カオナシの葛藤を人はみな青春時代に体験するはずだ。「自分らしさ」に疑問をもち、人の声で喋る自分。気が付けば欲望を丸出しにしている自分。何の権力もない自分。自分の思い通りにならないものに恐怖を感じる自分。「嗚呼、本当の私は何処にいるのだろう…」などと考えた若者も数知れず、だろう。
そして<いつも何度でも>悩み、苦しみ、<自分の中にみつける>。みつけるものはなんだろう。千尋は何を見つけたのだろう。
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この映画は宮崎駿の集大成なんだろう。監督はしてないけど『耳をすませば』や『おもひでぽろぽろ』で描いてきた地味な、人間の内面を考える映画である要素も僕はたっぷりだと思うし、『ラピュタ』や『もののけ』や『ナウシカ』のようにスケールもかなりでかい。『トトロ』や『魔女の宅急便』のようなカワイサもある。
これは子供向けの映画じゃないと思う。難しすぎるし、子供たち映画館で「恐いよー恐いよー」って連発してたから。お母さんの方が頭の「おい、おい、」という鳴き声(?)や千尋とエレベーターに一緒に乗った気持ち悪い、太っている神様の妙に可愛い足音に笑ったりしてたもんな。
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何度か見直してみて、この絶望的な冒険の始まり方に哀しくなる。こんな冒険は全然魅力的じゃない。
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