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[コメント] ボウリング・フォー・コロンバイン(2002/カナダ=米)

透明な敵と潔白なアメリカ白人。「お婿に行くまでのたしなみとしての爆弾づくり」?そしてついには「アメリカ経済の仕組み」まで解き明かしてしまう、その監督の行動力とパワーに脱帽。勇気を貰う。
ボイス母

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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透明な見えない敵に対し、ヒステリックなまでに恐怖心を持つ、アメリカ白人。 「いつかは自分を襲う(かもしれない)厄災に立ち向かうために、オレは銃をとる!」なんて言いながら、「アンタが一番アブナイよ」と思わず何度もツッコミをいれたくなる映画だ。

このやや神経症気味に、「来るかどうかワカラナイ厄災(事件犯罪戦争等)」に対し、過剰防衛とも言える自己防衛術(論?)を展開する「平均的アメリカ白人」を監督は揶揄するでもなく、本当に単純に、「何故?」「どうして?」と疑問を投げかけてゆく。

そしてその行程から明らかになる「アメリカ経済の仕組み」に愕然とさせられる。 「共存」「平和」「弱者に優しい社会」では「(アメリカ)経済は回らない」という事実。

しかし、そこで、監督は食い下がる。 その姿から見えてくるメッセージは、 「国民が恐怖心をあおられて、金を使い、商品を消費し、銃を買い、国も巨額の予算を使って軍備を整え、いつ来るかもしれない未曾有の国難に備え、貧乏人を搾取し、金持ちを更に金持ちにするアメリカ社会って、本当にシアワセですか??」 というモノに感じた。

そして、監督は行動を起こす。 「自分の思うところに忠実」に。 自分の本心と良心のおもむくままに。

それは結果として、ウォルマートの店舗から90日以内に銃弾を売り場から撤去するという約束を取り付けて、かすかな勝利をもぎとる。 これは小さな一歩かも知れないが、アメリカ人が自らを「変えよう」「変えたい」と思う、確実な一歩にはなるだろう。

「自分はつねに正しく潔白」「いつ犯罪被害者になるかわからない時代」「自分の家族を守るためだ」なんて言いながら、自動小銃持っている、アン タが一番アブナイよ!と自分の病理に気がつかないアメリカ人に何度も苦笑させられながら、ついでに寒気も覚えた。

そもそも、「普通の高校生が(自衛のために)自宅で爆弾を作ってみる」なんていう事が普通に起きるなんて、どう考えてもオカシイし。 「アメリカではナンですか?つまり、一人前のオトコってのは、結婚する前には銃の撃ち方や、爆弾の一つも作れないとダメって事ですか??」と勘ぐりたくなってしまう。

それでも、「コレは変だ」「コレはおかしい」と思う事に徹底的に食い下がり、自分の出来ることからでも世界を変えようとする監督の姿には大いに共感を感じた。

たとえ世界が絶望に満ちて、自分には納得のいかない理不尽な事で埋め尽くされようとも、間違っていると感じたら、「それは違うと思う」と声に出して言いたい。

この世界が少しでも納得がいく、よりよいモノになるのだとしたら、その努力は惜しむべきではないと、教えられた。 有り難う、マイケル・ムーア。 アンタはいい男だ。 見終わった後、猛烈にボウリングがしたくなった。

(評価:★5)

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