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[コメント] ジンジャーとフレッド(1985/独=仏=伊)

虚構の中の虚構の中のリアル。
ネーサン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







長旅をしてきたアメリア。 テレビのクリスマス特番「やあ、皆さん」に出演するためである。

バスで、ホテルで、TV局の楽屋で、彼女を取り巻くのは、 キワモノの出演者たちだ。

たとえば、2ダースのフリークスで構成された楽団。 お乳が18個もある牛。 遠い昔の誘拐事件の被害者。 裁判を起こしたゲイ。 心霊の声を録音する男。 浮遊する神父。 作家のそっくりさん…。

30年ぶりに再会したピッポとアメリア。 プロデューサーに言わせれば、彼らは、”国民的英雄の元・海軍将校”の舞台背景。 1940年代を演出するために、彼らは呼ばれたのだった。

逃げ出したくなっても、結局彼らは踊る。 転んでも、アクシデントがあっても、結局、踊る。 タップ・ダンスを踊る舞台上は、彼らだけの世界だから。

映画の中の、テレビ中継現場。 その舞台上で、「ジンジャーとフレッド」だけが、リアル。 段取りを忘れてしまったところも含めて、リアル。

※フェリーニの映画について語るのはすごく難しい。 感じることはできても、言葉に置き換えられないものに満ち満ちているからだ。

具体例を挙げて終わろうと思う。

出演前の、「控え室」 …きちんとした控え室がもらえないので、局勤めの知り合いトートが案内してくれたのは、工事中のトイレ? それぞれ壁に隠れて着替える二人。 ビニールのかぶせてある鏡越し、後方からポーズを決めているピッポ。 鏡越しにそれをみて振り返るアメリア。

何が起こるわけでもないのに、妙に心に残るシーンなのである。 こういうシークエンスについて、なんて言えばいいというんだろう?

(評価:★5)

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