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[コメント] 罵詈雑言(1996/日)

秘匿された原発事故とそれにからむひとりの青年の死の真相を、監督の突撃取材と再現ドラマで追求していく映画。

各地方で自主上映された時は、嘘八百過剰広告に激怒した観客に監督がリンチされそうになったりしたらしい。映画は、(本当かどうかは分からないのだが)ある地方の秘匿された原発事故を告発しようとした青年が、リンチの挙げ句便所の糞溜に放り込まれて謀殺されたという疑惑に、監督の当事者達への突撃取材と変にリアルな再現ドラマで迫っていくというもの。

タイトルの由来は、おそらく監督に向けられる当事者達の罵詈雑言の嵐にあると思われる。この監督の見っとも無い自己顕示欲は凄まじいものがある。じつのところこの監督がやりたいのは疑惑の真相究明なぞではなく、トラブルの渦中で暴れる自身(渡邊文樹)を演出して悦に入ることなのではないかとさえ思えてくる。(その孤軍奮闘の様は頗る笑える。)再現ドラマに描かれる地方の人間模様も笑っちゃうくらいリアルで、それ故にグロテスクにさえ見えてくる。映画のウリ方も含めて、監督の、“乙に澄ました都会の人間達のできないことをやってやる!”というような田舎者的なルサンチマンの情熱が滲んでいるようで忘れ難い。

でも残念なのは、結局それだけの映画に終わってしまっていることだろう。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)寒山拾得 neo_logic[*] 死ぬまでシネマ

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