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[コメント] スリ(1959/仏)

柔らかい手つき。

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「あなたの人生は夢よ。興味の対象が人と違うわ。」

キャストが全員素人というだけあって、過剰な演技は見られない。抑制的なセリフ廻しと、スリの過程の実際を記録するような視線でもって、柔らかい手つきのドラマを映し出していく。

ロマンスの要となるジャンヌ役の女性は、若く艶めかしい白い肌を抑制的に露出することで見る者の目を惹きつける。こんな女性が傍らにいるのに眼を向けない青年は確かに夢でも見ているのだろう。映画は青年が魅入られている夢の何たるかをうるさく言い立てることをしない代わりに、その具体的な興味の対象を克明に再現する(*)。あの手つき。青年はあのスリルと官能を帯びた手つきに魅入られていたのだろう。

青春の永いまわり道の後、青年はジャンヌを見出し、彼女とはじめて結びつく。青年は彼女の額に、彼女は青年の手に接吻する。その抑制的な表現は、だがひどく切なくてエロティック。思わず拍手したくなった。公開当時、パリの若者間でヒットしたというのも肯ける青臭い青春映画。

*)スリの演技指導であり劇中でスリの頭目を演じていたのは、有名な魔術師のカッサジという人なのらしい。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)にくじゃが[*] ドド[*]

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