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[コメント] バンコクナイツ(2016/日=仏=タイ)

“浮く”音響。車窓=画面=ロードムービー。水面のウタカタ。

モノラルぽく中央にあつめられたという音響の中で、音が、声が、あるいは歌曲が、楽曲が、音響のリアリティ志向のパースペクティブから解きはなたれて、水面に浮くウタカタのように画面から奇妙に浮く。画面と音声の拮抗が内部で蠢動し続けることで、映画が息をし続ける。

「ロードムービー」とは流れゆく車窓の風景の映画なのだと言う。だとすればこの映画も確かに「ロードムービー」ではある。なんとなれば映画の画面という「車窓」の中に、街が、村が、森が、河が、広がり、流れゆくのであるから。(その媒体としての船、バイクタクシー、バス。) たゆたう水面の表情は、端的にそこが楽園の縁であることを示してやまず。そよぐ風(そよぐ髪、布)。

3時間という尺は、いわゆる「物語の経済性」からすれば(長尺ならぬ)“超”尺かも知れぬが、この時間の独特の“たわみ”こそがこの映画の「質」なのだと、換言することも出来るようにも思われ。

アジアンスター的風貌の富田克也氏は被写体としてグッド。

***

有体に言えば、富田克也氏はじめ制作者達はかの国に恋したのだと思われ。さもありなんという映画。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)moot ぽんしゅう[*]

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