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[コメント] 紅い眼鏡(1987/日)

帰還した男が目の当たりにしたもの。

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







*(『ラ・ジュテ』のネタバレあり)

当初は千葉繁のプロモビデオの企画だったらしい。それが雪だるま式にふくらんで、終いにはどうせなら劇映画を一本やろうということになったとか。

成り立ちがそんなだからなのか、趣味的な映画になっている。押井守の映画体験の片鱗が窺えるような趣向になっている。おバカノリのアクション映画という体裁は『殺しの烙印』をはじめとする大和屋竺映画(主人公の前掛けシャツは『荒野のダッチワイフ』?)、物語の全てが末期の夢とされる構造は『ラ・ジュテ』。奇抜な設定の近未来SFという発想には『アルファヴィル』も念頭にあったという。

初見時はそんなことはツユとも知らなかった所為か衝撃を受けた。モノトーンによる画作りは低予算で雰囲気を出す為のひとつの手でもあるのだろうが(つなげやすく=編集しやすくもなる)、この映画では微妙なバランスで虚構然とした雰囲気をそれらしく捏造することに成功している(逆にその安っぽさが気持ち好くさえある)。色彩が蘇っていくラストが鮮やかに映える。

押井氏の映画(夢)には、何故かいつも少女がその姿を見せる。この映画では兵藤まこ演ずる(赤頭巾の)少女の顔が、至るところからその印象的な眼差しをこちらに向けている。それは主人公の末期の目に刻み付けられた眼差しであり、また押井氏の映画(夢)の世界を現実に引き留めておいてくれる命綱でもあるのだろう。

ちなみに、劇中で撮影に使われた空港は山形県東根市の山形空港。映画館は同県上ノ山市にある「トキワ館」(脚本伊藤和典の実家で、現在は閉館)。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)uyo[*] HW[*]

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