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[コメント] 座頭市(2003/日)

必要最低限の殺伐さに華を見た初期作品に比べ、余計なことを増やしていくことで魅力が無くなっていく不思議な監督だ。(040926)
しど

座頭市というきちんとしたフォーマットが存在する作品は、北野監督にとって初作品だろうか。ならば、本来の仕事、お笑いの視点である、社会通念というフォーマットを逆さに眺める感覚での座頭市を期待したのだが、どこか中途半端な作品になってしまっている。

初期の北野作品に顕著だったのは、固定カメラによる絶妙なショットとカッティングだと思っていたが、この作品では、無駄なパンショットがかなりある。カメラの動きを珍しがって使っているような印象だ。また、かつては、スタッフが準備したセットを空っぽにして無駄を省き、研ぎ澄まされた空気を演出していたのに、徐々に海外での賞やマーケットを意識し始めた頃から、無駄なモノを放り込んできている。例えば、この作品であれば、下駄タップやカットバックによる回想シーンなど。盛り込んだとして、それが上手くミックスされていれば満足なのだが、あくまで「足した」という印象しか受けないのが残念だ。時に監督自身が制作過程の物珍しさを楽しみながら作る学生映画のような印象すら受ける。

だからといって、北野版座頭市が面白くないかと問われれば、娯楽作品としては十分に面白い。殺陣の早さや随所の下らないギャグなど、安心して見ていられる。ただそれが、普通に面白い作品になっているだけである。普通の娯楽作品であれば、むしろ、「座頭市」というタイトルでは無い方が、北野作品としては良かったかもしれない。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)takasi[*] ぽんしゅう[*]

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