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[コメント] 武士の家計簿(2010/日)

「武士」と言えるかどうかギリギリのところで、家計簿が武士たらしめてくれてる。でも、ちょっと物足りなさが残る作品。
のぶれば

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この作品では、算術を生きる術とした武士らしからぬ武士を描いている。確かにチャンバラするばかりが武士ではないし、つつましく生きる武士の姿を描くのは在りだと思う。

武士であるが故の、見栄や体裁を軽視できない様や、それでも尚、最低限武士であろうとした武家の葛藤なども描かれていた。その点で言えば「武士」に視点をおいた作品ではあろう。

しかし・・・。山田洋次監督の、武士三部作がどうにも頭にちらついて、比較してしまうのだ。『たそがれ清兵衛』や『武士の一分』に見た貧しい生活や、それでもなお武士としての気高さを大切にし、剣術も怠らない武士が印象的だった。

それに対し、一族家系として続く伝家の宝刀を算術とした者たちも武士であると認めたとしても、私の中では、武士らしからぬ武士となってしまうのだ。ご馳走になるべく鯛が絵で描かれて出され、気落ちする一族の中で、子どもと一緒に「鯛じゃ、鯛じゃ」とはしゃぐ姿は健気ではある。しかし、それが武士の本分ではあるまい。武士として何かが足りないと思えてしまうのだ。

もっと算術が武士たらしめる場面が欲しい。あるいは算術に強い大義が欲しい。時代背景の中で、算術の必要性を描こうとしていたようではあるが、十分に伝わってこなかった。その辺が、もっとあれば「武士」を納得できたろうにと思うので候。

(評価:★3)

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