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[コメント] 母べえ(2007/日)

戦争を見せる映画ではない。戦争を感じさせる映画。これからは、私たちが、戦争を語る側になるのだと知らされる。
のぶれば

この作品は、二つを世に問うてるのではないだろうか。

一つは、戦争当時を語る側として戦争を伝えられているか。

もう一つは、戦争を伝えられる側として、受け取れたかどうか。

山田洋次監督は1931年生まれであり、戦争のさなかも生きてきた人である。本人の実体験も映画に影響しているように思う。しかし、現在、戦争当時のことを知る映画監督が何人いるだろう。この作品には監督の戦争を伝えたい思いが強くこめられているように感じた。

戦争を伝える人が少なくなっている。戦争の前線のことではなく、日常の生活の場で戦争が何をもたらせたのか、それを伝えることが難しくなっている。しかし、監督はそれを承知の上で、今だからこそ伝えられる戦争を伝えているように思う。

では、監督のメッセージを私はきちんと受け止められただろうか。私が幼いころに聞いた戦争の話は、戦災の怖さや悲惨さそういったものが多い。「どうしてそんな戦争をするのか」がわからず、戦争を止められなかった人たちをどこか責めていた。

しかし、この作品に描かれたテーマは、戦争にも負けぬ家族愛だろう。私にはここに描かれた人たちを責めることはできない。それよりも、戦争のさなかでさえ希望を捨てず明るさを失わずいた人の強さに今になって驚嘆する。母だけではない、その娘たちも時代に翻弄されながらも、前を向いて生きようとしてる。国のためではなく、家族のため、大切な人のため、前を向く。そんな人たちがいたことを、今度は戦争を知らない大人の私たちが、次の世代に語り継ぐ立場になる。

戦争の怖さは戦場だけではない。むしろ全国民の日常生活を巻き込んだことの怖さをよりリアルな話として伝えていかなければならないのだろう。 それを山田洋次監督は教えてくれた。そう思えるので候。

(評価:★4)

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