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[コメント] おとし穴(1962/日)

社会派不条理前衛喜劇
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







勅使河原宏長編第一作であり、朋友・安部公房とのコンビ作の最初の作品。 今更言うまでもなく、勅使河原宏は前衛映画作家である。安部公房もシュルレアリスム作家であり共通項が多い。二人とも一時共産主義に傾倒したが決別しており、勅使河原はドキュメンタリー、安部はルポルタージュを若い頃に経験している。 この映画は、そうした二人の経験がガッツリ盛り込まれた作品なのだと思う。

廃墟と化した街は幾何学的な様式美。まるでアラン・レネ。 一方、役者は肉体を酷使したリアリティ溢れる肉感的な描写。

警官(権力)は女を陵辱して逃げ、底辺の者ばかりがさらに不幸に落ちていく。 組合ウンヌンの話が出るも、「団結」と書かれた鉢巻が沈んでいく様から、そんな主義や思想が万能ではないことを描く。 そうした世の中の“不条理”に気付くのは、死人になって初めて客観視できるという面白さ。

彼らを死に追いやる田中邦衛演じる殺し屋は、組合を壊滅させるための刺客にも思える。しかし私は、第三の何らかの組織の存在というよりも、天災にも似た不条理な“不幸”なのではないかと思う。言わば悪魔。いや、死ぬという不条理を受け入れることで、現実世界の不条理を客観視できることから、むしろ神なのかもしれない。まるでベルイマン。

(17.07.27 ラピュタ阿佐ヶ谷にて鑑賞)

(評価:★4)

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