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[コメント] シェイプ・オブ・ウォーター(2017/米)

アーモンドチョコだと思って齧ったら、何だか違う物が入ってるようなんだけど、まあなんとなくアーモンドチョコっぽいからいいか!みたいな感じ。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







冒頭、「チョコレート工場が火事だ」「カカオの焼ける香り」という話が出てきます。 匂いの分からない映画で「匂い」に言及するのって、意外と珍しいと思うんですよね。せいぜい、腐乱死体を前にした刑事が鼻をつまむくらい。

このエピソード、「声は出ないけど五感はちゃんとしてますよ」「むしろ感性が鋭いくらいですよ」という説明であると同時に、「この映画は甘い香りの映画です宣言」じゃないかと思うんです。

ついでにもう一つ宣言というか言い訳していると言えば、古き良き時代のハリウッド映画を何度もテレビに映すことで「この映画もそうした時代のシンプルでストレートな物語ですよ」と言っているように思うのです。

でも、シンプルなチョコかと思ったら中に何か隠れている。カリッとアーモンドかと思ったら、何かネチャって変な味が混ざってる。まずいパイ屋の黒人客差別エピソードとか。 違和感は作家の意図です。コーティングで隠された先に真意がある。

たしかに、ギレルモ・デル・トロという監督が分かってしまっているんで、ラブ・ロマンスはチョコレートコーティングだと思うんです。『殺人魚フライングキラー』でおなじみジェームズ・キャメロンの『タイタニック』みたいなもんですよ。 そして「デル・トロなんだからこれは怪物だ」と思っちゃうわけです。

私はしばしば「怪物の哀しみ」ということを重要視しています。その原点は『フランケンシュタイン』、分かりやすく言えばその本歌取りの『シザーハンズ』。あるいは『キングコング』。その本能故に人を傷つけてしまう。触れることの出来ない、触れてはいけない人間に恋をしてしまう。 我々はそこに「怪物の哀しみ」を想い、感情移入する・・・。

いや、待てよ。黒人客差別のクダリでふと思うのです。 こいつ、怪物じゃなくて、ただの黒人奴隷なんじゃね? 確かに猫にかぶりついたりAGAだかHAGEだか直したり東西冷戦に巻き込まれたり超人的な面はあるけどさ、ただ見た目が悪いだけなんじゃない? もしかするとこの映画、『キングコング』や『フランケンシュタイン』じゃなくて、『ドライビング Miss デイジー』だったんじゃない?(<そうか?)

要するに「怪物の哀しみ」ではなく「差別される者の哀しみ」だったように思えるんですが、『デトロイト』といい『スリー・ビルボード』といい、ここんとこ差別描写(批判)が多いと思うのです。ちょっと前まではタランティーノが「アメリカン・ジョーク」ネタとして扱ってたのに、もはや笑いにしたら怒られそう。ダウンタウンの『ビバリーヒルズ・コップ』みたいに。むしろタランティーノの方が映画を作りにくいご時世かもしれない。 まあ、ギレルモ・デル・トロ、アルフォンソ・キュアロン、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥといったここ最近のアカデミー常連、言わば今のハリウッドを牽引しているのがメキシコ人で、そのメキシコに壁作る言うとるからな。文句言いたくなるのも分からんではない。

そう考えると、「古き良き時代のハリウッド映画」も単なる言い訳じゃなく、「あんなに素敵な映画を作れていたアメリカが何でこうなった?」というメッセージにも思えてきます。

その一方で、新たな疑念も生まれてきた。 このラブ・ロマンス、あるいはミュージカル、本当にコーティング? 実は本当にミュージカルやりたかったんじゃない?だって映画早々から主人公はステップ踏んでるじゃん。最初っから踊りたくってウズウズしてたじゃん。 だけどデル・トロは「異形の者」アプローチしかできなかったんじゃないか?という穿った見方。

いや、俺、素直に面白かったんだけどね。

(18.03.04 ユナイテッド・シネマとしまえんにて鑑賞)

(評価:★4)

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