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[コメント] 犬猿(2017/日)

言葉にしたら陳腐な関係を巧みなエピソード構築と役者の好演で描写する。健全なバランスの映画。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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冒頭で映画の予告編が流れるんですね。映画館で観てると本物の予告編かと一瞬錯覚するんですが、「なんじゃそりゃ」くらい下手くそな予告編なの。 この劇中劇、筧美和子がいかに売れないタレントかという説明でありながら、役者の演技の落差にもなってたんです。ニッチェ江上、筧美和子の演技が予想外に(<失礼)巧かった。そして筧美和子は可愛かった。 冒頭の下手くそ劇中劇は、いわばオリックス星野の緩いカーブみたいなもんだったんですよ(<例えが古い)。 吉田恵輔作品は『さんかく』しか観てなかったんですが、思い返せばえれぴょんも上手かったんだ。もしかするとこの監督は、演技力を引き出せる人なのかもしれません。

兄弟、姉妹の「犬猿の仲」を描くんですが、言葉にしちゃうと陳腐なんです。一人っ子の私ですら理解しやすい言葉に置き換えられちゃう。だけどこの映画は、それをきちんとエピソードとして消化(昇華)していく。丁寧に作られています。 それにね、この監督は上っ面のイイ話には興味が無いんですよ、きっと。『さんかく』の段階で薄々気付いてはいたんですけどね。

たぶん「ヒューマンドラマ」というジャンルに分類されると思うんですが、実は結構毒があるしヒリヒリ痛い。見方によっては「隠し味」なのかもしれないけど、私はこの監督の「基本のダシ」のような気もするのです。ま、なぜ料理に例えているのか自分でも分かりませんが。

この手の映画は、過剰にコメディーに走るか、作り手の思い入れたっぷりなんだけど雰囲気だけになるか、両極端に陥りがちですが、この映画はバランスもいい。健全なバランス。とにかく、登場人物の気持ちの流れがいたって自然。

吉田恵輔作品をもっと観るべきだったな。

(18.02.22 テアトル新宿にて鑑賞)

(評価:★4)

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