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[コメント] 陽炎座(1981/日)

ツィゴイネルワイゼン』が狐につままれたような映画なら、『陽炎座』は狸囃子で道に迷ったような映画。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







鈴木清順没後に再鑑賞してレビュー全面改訂。 15、6年ぶりの再鑑賞。スクリーンで観るのは4度目くらいかな。 大学生の頃に旧文芸座で『ツィゴイネルワイゼン』と共に出会った衝撃作。いや、マジで、衝撃だったんだよね。 その時、鈴木清順と脚本の田中陽造の対談もあって、田中陽造が「すごく脚本にダメ出しする監督で、そのくせどこがダメだか言ってくれない」と話し、鈴木清順はただ笑って聞いていたことを覚えています。

その割に『ツィゴイネルワイゼン』ほど観返してない『陽炎座』。 ストーリー自体は『ツィゴイネルワイゼン』より分かり易いのに、映画は『ツィゴイネルワイゼン』より分かりにくいんですよ。

その理由は演出。特に序盤はもうメチャクチャ。 続いてるはずのシーンで不自然にカットを割って人物の立ち位置を変えたり、逆にワンカットでパンして「あれは1週間前だったか、1ヶ月前だったか…」とか言って回想から現在に移動したり。これ、序盤でついていけなくなる危険を充分に孕んでいる。あと細部が分かんない。何度見ても意味不明。 謎の体位。回る舟。○△□・・・

ところが終わってみれば、『陽炎座』の方がインパクトがある。分かりやすいインパクトと言ってもいい。 鈴木清順爺さん、意図的にワケワカラン状態を作り出して観客を煙に巻いて、バーンとデッカイ見せ場を終盤に持ってくる。要するに「カマシテル」んですよ。 「鈴木清順の映画で最も過激」と呼ぶ人もいるくらい。

今回改めて観て感じたんですが、子供歌舞伎(?)浄瑠璃(?)やるじゃないですか。あれで歌いながら関係性を説明するんですが、これが分かりやすい。 鈴木清順って昔から歌って踊ってのミュージカル要素が意外と多いというか好きみたいなんですが(その集大成が遺作『オペレッタ狸御殿』・・・なのか?)、このシーンもその延長線上なのかもしれません。

ただ、清順爺さんの「オフザケ」もこの辺がギリギリじゃないかと思うんだよなぁ・・・。

(17.08.15 北千住シネマブルースタジオにて再鑑賞)

(評価:★5)

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