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[コメント] クリーピー 偽りの隣人(2016/日)

あまりにも普通。いっそキャスティングを逆にすればよかったのに。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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いつも同じこと書いてますけど、私は黒沢清を「この世界は不安定であることを描き続ける作家」だと思っています。 今でもそのスタンスは変わらないと思うんですが、『リアル〜完全なる首長竜の日〜』辺りから変化の兆しがある。

それ以前は「アッチの世界がコッチの世界を侵食する」という話が多かったように思うのです。 アッチの世界は得体の知れない“不条理”なもので、コッチの世界が静かに侵食される。だからコッチの世界は不安定であり、ホラーでもあった。初期黒沢清の傑作『CURE』や『回路』が代表例。

一方、ここ最近の作品は“得体の知れない世界”から“人”に比重が置かれているように思える。先に述べた『リアル』は人の意識下の話だったし、『岸辺の旅』はあの世に行った人の話だった。そしてこの映画は、決して特異ではない、現実にも起こり得る設定を持ってきた。 つまり、「不安定な世界」の要因を“人”に求め始めたように思えるのです。一体黒沢清にどういう心境の変化があったか知りませんけどね。

彼がホラーを好んで描くのは、恐怖ってのは理屈を超えた先にあるものだからなんですね。しかしこの「理屈を超えた何か」好きという癖が邪魔をしているように見えるんです。 簡単に言えば、登場人物の“感情の流れ”も理屈を超えちゃってて、不自然に見えるんですよ。 だってこの映画、西島秀俊も竹内結子も、最初っから何考えてんだか全然分かんないじゃん。そんなことない? “人”に比重を置くなら、この悪癖をなんとかしないと、一般受けはしませんぜ。

それに、黒沢清の中ではいろいろ思う所が(実験も含めて)あるんだろうと容易に推測できるんだけど、結構ありきたりじゃない? だって、香川照之が怪しい人なんて普通じゃん。 むしろキャスティングを逆にして、西島秀俊が隣人役だった方が怖かったんじゃない?

(16.06.19 丸の内ピカデリーにて鑑賞)

(評価:★3)

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