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[コメント] イノセント・ガーデン(2013/米)

わーい!パク・チャヌクのハリウッドデビュー作!と喜び勇んで観に行ったら、まさかのヒッチコック新解釈。よーし、受けて立つぜ!
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







設定を聞いて『疑惑の影』みたいだと思ったら、まさかの「チャーリー叔父さん」。 ヒッチコック監督作『疑惑の影』ってのは、田舎で退屈している少女チャーリーの家に「チャーリー叔父さん」がやってきて、最初はワーイ言うとるんだけど、だんだんチャーリー叔父さんが怪しく思えてくる。実は叔父さんは・・・って話。 ね。ほとんど同じでしょ。 てか、「チャーリー叔父さん」って命名したってことは確実に意識している。ただのパクリだったら、わざわざそんな真似しないでしょ。

結論を言えば、この『イノセント・ガーデン』、ラスト数分だけで私は大満足。こんな映画が観たかった。こんな狂った映画が観たいんだ!

しかし、内実はなかなか面倒くさい映画だ。

疑惑の影』は、田舎娘のチャーリーと叔父さんのチャーリー、男女2人のチャーリーの関係性で物語が進む。 『イノセント・ガーデン』は、チャーリー叔父、男好きのする母、純潔な娘という3人で進行する。途中、2人の婆さんとボンクラ男子をわざわざ登場させて排除することで、クッキリと「3人の物語」を際立たせる。 いや、正確には3人の物語ではない。叔父と姪、母と娘、それぞれの物語なのだ。いや、それも違う。これはもう母と娘じゃない。1人の男をめぐる女と女の物語だ。面倒くさい。

疑惑の影』は、見方によっては「少女が大人になる物語」と読み取ることができる。 そして『イノセント・ガーデン』は、確実にハッキリと「少女が大人(女)になる物語」として描いている。性の目覚めを明確に描き、同時に、自分の中に流れる“血”に目覚める。

「花は自分で色を選べない。しかし、それを受け入れてしまえば自由になれる」

これは、主人公の少女が「自覚する物語」であり「宿命を受け容れる物語」である。 そうかあ、『疑惑の影』をそう解釈したかぁ。

もう一度だけ話を『疑惑の影』に戻そう。 最初に書いたとおり、少女チャーリーとチャーリー叔父さんの話。 なぜこの二人は同じ名前なのだろう? おそらく、『イノセント・ガーデン』の解釈は、二人は同じ“血(資質)”を持った人間ということなんだと思う。 その二人が、『疑惑の影』では善と悪の両方に別れる話だったが、『イノセント・ガーデン』は同化する話となったのだろう。なかなか面倒くさい。

ふぅ。アン・リーの『ラスト、コーション』以来、久しぶりにヒッチ先生引き合いに出して熱弁ふるったぜ(<『ヒッチコック』でやれよ)。

(13.06.09 新宿シネマカリテにて鑑賞)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] プロキオン14[*]

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