コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] リダクテッド 真実の価値(2007/米=カナダ)

デ・パルマのド本気。「アメリカ」の映画。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







こうした内容の映画はその内容についての賛否が先行しがちで、特に個人の“思想”に触れる部分は論議を呼ぶことがあります。 実際、ヴェネチア映画祭でも賛否の嵐、アメリカではニュース番組で上映禁止を呼びかけられたとか。

まあ、賛否や議論があることはそれはそれでいいんですが、私は、この映画でデ・パルマが貫いた「第三者の視点」を高く評価したいと思うのです。

企画の段階で、ハリウッドメジャーの配給が望めないことは分かっていたはずです。 それでも自ら脚本を書いてこの映画に挑んだデ・パルマ。 ほぼ全編、誰かの「カメラ」による映像で描写することで貫いた第三者の視点は、冷静でありながら、むしろ冷静を装っているが故、逆にそのド本気が垣間見えるのです。

この映画には、私の大好きなデ・パルマのケレン味たっぷりのスローモーションや画面分割はありません。 もちろん様々な「映像」の組み合わせはデ・パルマ的ギミックではあるのですが、淡々と積み重ねられる「映像」は、言葉ではなく映像で語ろうとする“映画監督”の凄味すら感じます。 その姿勢の決定的な現れが、エンディングの写真であることは異論の余地がないでしょう。

そして忘れてならないのは、「フィクション」だと冒頭で宣言していることです。 これは批判を避けるための手段ではありません。 「フィクション」を構築するのは、そこに描くべき「意図」があるからです。

兵士達の人種や生い立ち、帰還した者が「英雄」として迎えられる社会、特ダネを手にすれば成り上がれる風土。 この映画の「意図」は、戦争そのものよりも、「アメリカという国家」を描写することだったのではないか、と私は思うのです。

デ・パルマに『キャリー』以来の★5進呈。 いま思い返すと『ミッドナイトクロス』に5点やってもいい気がしてきたな。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)Orpheus uyo シーチキン[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。