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[コメント] 羅生門(1950/日)

総てにおいて常人の発想を超えた「コロンブスの卵」的テクニックが満載
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







もちろんストーリーもそうだが、宮川一夫のカメラもそうだ。(面白いウンヌンは皆が書いているので私はあえて避ける)

秘められたエピソードが明らかになるにつれ、公開当時よりもむしろ時間が経つにつれ評価が上がっていくという、最近ではトンとお目にかかれないパターンである。(逆に言えば、公開当時の観客(永田雅一もだが)にこれを受け入れられるだけの成熟した土壌が無かったとも言える。好みは別として、難しいウンヌンという意見が未だに世間にある以上、映画の上級者向けなのかもしれない)

「世界で初めて太陽にカメラを向けた」「雨に墨をまぜた」「木漏れ日を表現するために鏡をつかった」等々、他の人のコメントにもあるが数々のエピソードがある。

私が一番驚いたのは、冒頭、深い森の中へ志村喬が歩いていくシーン。カメラも同時に移動しながら志村喬に回り込む。観た時は「レール(カメラを乗せて移動する)をS字に引いたんだなあ。手間かけてるなあ」と思っていたのだが、なんと、まっすぐのレールをまたいで、志村喬がS字に歩いているというではないか。

こういった数々の(技術的)エピソードから私が驚くのは、例えばキューブリックやスピルバーグ、ルーカス達の「革新的技術導入」ではなく、既存の技術を斬新な発想で活用しているだけだ、という点である。円谷英二の「ロケットを上に飛ばせないならカメラを横にしろ」という発想と同じである。(まあ、日本的な貧しさと言われればそれまでだが)

大金をかけるばかりが能じゃない。独創的な発想(もちろんストーリーもだが)があれば面白い物(絵)が作れる。ある意味、今の日本映画界及び我々ビジネスマンひいては日本経済にとっての教訓とも言えるのではなかろうか(そんなオーバーな)。

私の尊敬する脚本家橋本忍のデビュー作。ラストの青臭さは許してもらおう。 (と私も最後に蛇足)

(評価:★5)

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