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[コメント] パッチギ!(2004/日)

なんのことはないいつものベタベタ井筒映画。ロッテの小宮山のピッチングみたいなもんで、落差が激しいから実際よりも速く見えるだけ。でも、日本人なら観た方がいい。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







実際「発禁」レコードなんてものは、この世に(少なくとも日本には)一つも無く、放送局やレコード会社が自主規制しているにすぎないのであってね。 それでも日本音楽史上最も有名な発禁(まあ中止でいいや)はこのフォークルの「イムジン河」で、それが伝説と化しているのは、自主制作「帰ってきたヨッパライ」で彗星の如く衝撃的に世に現れたザ・フォーク・クルセダーズの期待の第二弾だったから。それも「帰ってきたヨッパライ」一つで解散するところを、請われて限定1年のバンド活動の中での出来事。さらにこのエピソードで一番いい話は、「それじゃあ」ってんで「イムジン河」を逆回転させたメロディーが「悲しくてやりきれない」だという事。わずか1年の間にアルバム5枚シングル8枚リリースして解散した伝説のフォークル。その後、加藤和彦はサディスティック・ミカ・バンドを結成し、はっぴいえんどと並び日本のミュージックシーンの二大源流となっていく・・・って語り出すと長いからもうやめるね。いずれにせよ私も後に知った伝説なんだけどね。

逆回転させてでも「イムジン河」を世に知らしめたかった、早すぎた天才・加藤和彦の高すぎる志に比べたら、こんな映画の志なんかまだまだ。騙されちゃいけないよ。結局、フォークルオリジナルの「イムジン河」は一度もかかってないんだよ。「歌っちゃいけない歌なんかない」というなら、伝説の当の発禁オリジナルを、聞・か・せ・て・お・く・れ。

いつもいつも思うんですけどね、井筒映画ってベタで寒いギャグで始まって、それが延々続くので、観ていて本当に辛いんです(いつもいつもなおざりなハッピーエンドってのも嫌な要素なんだが)。 で、この寒い時間から「パチッ!」とスイッチが熱く切り替わる瞬間があって、この落差と長さが井筒映画の評価の分かれ目パターンだと思うのです。 通常は寒い時間が3分の2、酷い時は5分の4寒いままなのですが、本作はそれが2分の1程度で済んでいる。仮性包茎から在日までと軽重落差も激しい。

言っちゃ悪いけど、この映画を良く見せているのは、この「落差」と「役者のツラ構え」としか私には思えない。

映画的な興奮が詰まっているのは、棺桶を通すための戸の破壊くらいしかないしね。あれはやり場の無い悲しみと憤りが込められたグッと来るシーン。 それ以外は全部ベタな直接描写。日本一のヤブ医者顔役者・笹野高史の大演説なんてベタもベタ。言ってる内容が重いだけで、映画的には寒いギャグと一緒のレベル。

69』よりは百万倍マシだが、『キューポラのある街』以上の何かも『けんかえれじい』以上の何かもこの映画には無い。 けにろん師匠もコメントされているが、「朝鮮人になれるの?」のオトシマエもない。袈裟姿でドライブなんて問題を先送りにして逃げてるだけじゃないか。何がパッチギ!じゃ。『GO』の方がはるかに真摯に向き合っているぞ。

ただ、21世紀の今これを作ったことは評価していい。

(評価:★3)

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