コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ガメラ 大怪獣空中決戦(1995/日)

「顔」で見せる防衛シミュレーション映画。何度見ても興奮する。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







4K HDR版でほぼ4半世紀ぶりの劇場鑑賞。HDRって何?でも綺麗でしたよ、中山忍が。俺も怪獣のいない東京を案内したかった。

特撮界隈には大変マニアなその筋の先輩諸氏が大勢いらっしゃいますから迂闊なことは書けないんですが、そもそもガメラには大きな「枷」があると思うんです。なんだよ「空飛ぶ亀」って。

後発怪獣だから基本性能に無理があるんですよ。亀だからね。お前ほど歩みののろい者はない。なので、泳ぐ以外に「飛ぶ」というスペックを持たされちゃっている。さすがにこれを無視できなかった。無視してもノロノロ歩くだけになっちゃうしね。その結果、「そんなのいねー」って生物になってしまった。ゴジラはまだ「古代生物」って言い張れるけど、「空飛ぶ亀」なんて科学的説明がつかない。邪魔でしかない設定。これがガメラ最大の「枷」。せっかく、『ゴジラvsビオランテ』のせいで古典芸能になりかけた怪獣映画に、『パトレイバー』の流れから「防衛シミュレーション」というリアルを持ち込んだのに。

ところが平成ガメラチームは、あり得ない「巨嘘」というボコボコの穴を丁寧でリアルな(悪く言えばもっともらしい)説明で埋めていったのです。その結果、邪魔でしかなかった「枷」が、ガメラ誕生の「謎」に変貌し、サイエンス・フィクション・ミステリーへと様変わりした。この物語の再構築は見事としか言いようがない。あの科学的説明をする袴田吉彦は『パトレイバー』のシバ シゲオだし『うる星』のメガネだよね。

そして何と言っても、金子修介の丁寧な仕事ぶり。私は「顔」の映画だと思うんです。 事態を見て驚く者の「顔」を多用する。スピルバーグがよく使う手法で、古くはベルイマンが用いた手法です。簡単に言えば「リアクション」。金子修介は丁寧にリアクションを撮る。ヘリから見下ろす搭乗員の「顔」。あれ多分、当時まだ無名だった佐藤二朗だと思うんだ。

そして最後の最後、ガメラが見せる「ドヤ顔」。

私はずっと、セガールの娘を「巫女」とすることでガメラを「神」に見立てた脚本に気を取られていましたが、今回ガメラの「ドヤ顔」を見て「これは完全無欠のヒーロー映画だったんだ」ということに気付いて涙したのです。

(2021.10.31 Morc阿佐ヶ谷にて再鑑賞)

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)ペンクロフ[*] ぱーこ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。