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[コメント] ミニモニ。じゃムービー お菓子な大冒険!(2002/日)

ピクサーに勝るとも劣らないハイレベルなファミリー・アニメーション!ネタバレなしで熱く語る!
ペペロンチーノ

矢口真里が好き」な私でもさすがに恥ずかしくて映画館に行けず、DVDを買ったはずが間違ってメイキングを買ってしまい、まごまごしているうちに店頭から消え、レンタル屋でも見かけないし、おそらく生涯で唯一の「矢口真里主演(か?)」作品をこの私が見逃すとは!!!とオロオロしていたところ、5歳年上(だから40歳のはず)の職場の先輩が「俺持ってるよ」とあっさり貸してくれたおかげで観ることができた一品。

先輩にひとことお礼を言わなければなりません。「40歳にもなってこんなもん買ってんなよ!」

監督のヒグチしんじは言わずと知れた現在日本最高の特撮屋樋口真嗣。 元祖特撮『ゴジラ』シリーズが円谷の幻影に引っ張られて室内撮影そのまま閉塞感満載の折、本来特撮怪獣物の亜流のはずの『ガメラ』(平成ガメラシリーズ)に於いて、大胆にもオープンセットで自然光を取り入れるという荒技をやってのけ完全に本家を駆逐した樋口真嗣である。

とっとこハム太郎』のCG監督(たしかミニハムズのシーンがCGだったと思う)をした関係で「ミニモニ。」映画の監督をすることになったのだろうが、初監督作品がこんな映画でいいのか?しかもナッチ主演の『仔犬ダンの物語』のおまけみたいな併映作品でいいのか?

多分よかったのだ。 かつて岡本喜八が「どうせおまけの併映だから」と好き勝手やって『ああ、爆弾』という名作(迷作?)を生み出したのと同様、気楽な立場で好きに作った結果が面白さにつながったのだ。 全編CG&合成(1カットだけ手を加えていない箇所があるそうだが)ばかりでなく、『オネアミスの翼』の助監督や『エヴァ』の絵コンテも行った本来「アニメ屋」の血が騒いだか、3Dにまぎれた2Dアニメ、出崎統ばりの止め絵とマニア向けサービス満点。 これはもう立派に「樋口真嗣にしか作れない作品」に仕上がっている。 きっと『ピストルオペラ』の特撮をやった経験も生かされているだろう。いや、鈴木清順演出は参考にならないな、きっと。

ではマニア(アニメ、特撮、ロリ総て含めた意味で)映画かというと、決してそんなことはない。 「ミニモニ。」の主なターゲットである小学生を、そして一緒に来た親を満足させるに充分な53分。 むしろ完璧なファミリー映画だ。 ピクサーと肩を並べると言っても過言ではない!(と言ってるのは多分俺だけだ)

ピクサー作品と異なる点は、まず「世界視野」ではないこと。 これは逆に、「ミニモニ。映画」という規定の中で、欲をかかず忠実にそのターゲット層を押さえた作りをしたことを評価すべきである。

そして、最大の相違点であり最も評価すべき点がある。 ピクサー作品がオモチャや怪物や魚達を「擬人化」し、よりリアルに(でもかわいらしく)見せることに主眼を置くのに対し、本作ではミニモニ。を「戯画化」することに主眼を置いている。 それはミニモニ。をさらにちっちゃくしてCGにするといった意味ではなく、リアルなミニモニ。つまり生身のヤグチやミカやツジ・カゴを「漫画的記号論」によって描写しているのである。

映画の面白さは人間の苦悩や成長といった「人間描写」に負う所が大きい。 そのために役者は、なんとかメソッドとか言いながら、その感情をよりリアルに観客に伝えるために演技を磨いているのだ。そういった意味で言えば「擬人化」の方が正しい手法なのだろう。 だが、しつこいようだが、本作は「ミニモニ。映画」という企画物だ。演技に関しては素人集団、有体に言えば下手っぴいなのだ。 どんなに矢口真里が可愛かろうが、どんなに矢口真里が好きだろうが、下手なものは下手。そこに見え隠れするのはバラエティー色、つまり「ハロモニ」のコントレベルでしかない(<見てんのかよ)。 そんな状態に中途半端なドラマ性を持ち込まれても「白々しさ」か「気恥ずかしさ」しか感じられない。

それを樋口真嗣は「戯画化」によって見事に払拭したのだ。 さらに「国内ターゲット」であることが功を奏する。あえてゼロから物語を構築する必要はない。既に確立している「ミニモニ。」というキャラクターをそのまま利用すればいいのだ。

そこに「ミニモニ。」と「CG」があればいい。

そんな開き直りが清々しい。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)アルシュ[*] ピロちゃんきゅ〜[*] tkcrows

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