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袋のうさぎさんの人気コメント: 投票数順(1/2)

人気コメント投票者
★5ミークス・カットオフ(2010/米)地の果てまで続くような砂礫と灌木の乾いた風景。それが1週間、2週間と続き、あるいはもう何年も経ったのかもしれず、永遠と無限を想起させずにはいない反復の終わりに何があるのか(楽園?神?世界の終わり?)、募りゆく疑念も不安もそのまま、唐突に暗幕が下りる。実際は90分付き合っただけなのに、まるで神隠しにあったような意識の晦冥。このようにして我々はある日自分の死に不意打ちされるのかとDSCH, けにろん, ゑぎ, ぽんしゅう[投票(4)]
★4ザ・ハント(2020/米)ポストトランプな『猟奇島』だからといって、誰が一笑に付すことができるだろう。序幕は真の主人公が確立されるまで、のべつ幕無しに視聴者の先入観の裏をかくことに重点を置いた構成。ジャンルファンなら無関心でいられない仕掛けが散りばめられてる。惜しむらくは、中盤以降、出涸らしのミームの寄せ集め以上にナラティブ的な深化が見られない。マナーハウスの果し合いに至っては、『キルビル』の劣化コピーに甘んじている 7/10t3b, けにろん[投票(2)]
★4ブルータル・ジャスティス(2018/米=カナダ)Stormfrontや8kunで気炎を吐くような保守反動の金気臭さ*は薬にもならないが、ネオナチご贔屓のブラックメタルよりもむしろ正統派へービーメタル寄りのズッシリとした挙措動作のリズムと赤剥けの暴力の恐ろしいほどの切れ味は、結構なトラウマもの。前2作のこじれたバロック趣味も悪くはないが、絶賛もしない人間にとって**、今回のtrollらしいシニシズムの計算づくのドライさは好感。悪意に満ちた不意打ちの演出も磨きがかかる [review]ゑぎ, DSCH[投票(2)]
★5ジュデックス(1963/仏=伊)「或る夜の出来事」という措辞の持つの曰く言い難い響きが木霊する二度の出現#。深層のじじまの中から魔性のものが立ち上がる驚異の瞬間。寝静まった城に夜盗に入った黒タイツの女が復路の門前で狼の一群と遭遇するまで。道端で傾眠する探偵が憑き夜の石畳を戞然と鳴らす辻馬車の到来に驚かされて白タイツの女曲芸師と再会を果たし。目もあやな陰陽二人の対決、三角屋根上のキャットファイトほど、美学的に満足のいく結着はない [review]ゑぎ, KEI[投票(2)]
★5象は静かに座っている(2018/中国)曇り空の街並も人間模様も殺伐として、どこを見渡しても心の潤いなどなさそうなのに、めったにないような瑞々しさが奔騰する瞬間があって、目が洗われるようだった。伏目がちなアップの物思わしげな無言劇が充実している。団地や路地、陸橋など没個性的な都市の舞台袖が霜枯れの抒情を帯びるのは、作家にとってそれらの場所が特別な感慨なしには想起できないほど重みを持つからだろう。たとえそれが地獄の一丁目に過ぎないにしても [review]セント, ぽんしゅう[投票(2)]
★4殺人者にスポットライト(1961/仏)遺産相続殺人に相応しい、謎と陰謀の目眩くアラベスクを期待すると拍子抜けするが、同じ監督の後年の作品と同様、おとぎの森や湖畔の古城を使って、素朴な幻想の陰画が試みられていることに合点がいけば、見所は事欠かない。 [review]ゑぎ, ぽんしゅう[投票(2)]
★5凱里ブルース(2015/中国)貴州は未踏だが、孟族の国は越中国境で馴染みがある。峰巒重畳たる低山の風景、坂と階段の多い町、崖際や山裾の高低を活かした建築など目を楽しませる被写体が多い。伝奇のリアルへの蚕食、騙し絵的な背景幕、滴・蒸気・汽笛の魔術的な表現、無意識にそよめく囃子声、絵巻物のようにパンするカメラ、個々の背中を追って町の動脈を行き来する移動撮影、譫言のような詩の朗読など先人の影響は明らかだが、病みつきになる魅力がある [review]ゑぎ, ぽんしゅう[投票(2)]
★5コロンバス(2017/米)建築映画としては、ローマの大聖堂とその作者の生涯を下地にした『La Sapienza』の後に続けて見ると、モダニズムとバロックの様式の違いだけでなく、その背後にある宇宙観の変遷(超越性から内在性へ)まで透けてくるから面白い。建築家が思い描いた世界の<梁と屋根>を虚心になってなぞることで精神に変容をきたそうとするところは、同様に先入観で目を曇らされた男が盲人の導きにより開眼する「大聖堂」**に通底するものがある [review]ぽんしゅう, けにろん[投票(2)]
★4不審者(1951/米)同じ町(あるいは国)で生まれ育った男女が、偶然異郷の一角で逢着し、思い通りにいかない人生を慨嘆しているうちに寂しさ(あるいは別の思惑も・・・)から不倫関係を結ぶ。世界各地でそれこそ夜空の星の数ほどありそうな話だが、それでも魅せるのはロージーの演出力なのだろう。 [review]ゑぎ, ぽんしゅう[投票(2)]
★4オールド・ヘンリー(2021/米)それこそ作品全体の命運を決するような唯一無二の瞬間を、神々しく、最高峰に生きるために、物語の山谷・気分の浮沈・話運びの緩急が段取りされているような映画。 たとえそこでしたり顔に下される決断がどんなに陳腐で手垢にまみれていても、肝心な場所でとちらなければ、後々まで尾を引く強い感銘を与えることができるんだなあと。臆面もなくベタな展開なのに、久々に全身粟立った。7.5/10KEI[投票(1)]
★5ビリディアナ(1961/スペイン)縁故主義・情実人事が横行する、実質半径数人の領地に、エデンの園の住人みたいにして暮らしてる。門の外は煉獄しかない。何もかも同語反覆的で再帰的(親族結婚・寄生関係・収奪経済・旧世界の悪徳の再生産)。ヒロインが顔だけでなくそのドン・キホーテ的な言動まで信心屋の親友に酷似してるのを再発見して愕然。奇遇にも同じ<El sur>の0.001%だ。私も遺言状をしたためるドン・ハイメのような黒い笑いの発作の常習犯だったゑぎ[投票(1)]
★3地下幻燈劇画 少女椿(1992/日)幻燈的な紙芝居を意識している割には、つなぎの絵が普通の深夜アニメの質に戻ってしまうのが残念。他人の画風を真似るだけでは超えられない壁を感じた。快調に始まったかに思えたエログロサーカスも、2話3話に入る前にネタを出し尽くして閑古鳥が鳴く有様さず[投票(1)]
★3ホール・イン・ザ・グラウンド(原題)(2019/アイルランド)舞台がブリテン島で、大森林があり、隕石のクレーター付近で超常現象的な怪事件が連続して起きるとなると、やはりマッケン的な異形幻想を期待してしまう。初動はなかなかギアが入らず眠気を誘うが、人ではないものの疑惑が芽生える中盤の見せ方に工夫があって少しの間目が冴える。ただ、大団円に近づくにつれ、旧作ヒットメドレー・リミックスのように見えてくるあたりが、この分野にとんと新風を吹き込めずにいる時代の限界かKEI[投票(1)]
★4収穫期(2004/露)見果てぬ大草原の呪いとでも言いたくなるようなものが画面に息づいている。それは時として神の恩寵かと見紛う光の乱舞で人の目を欺きもするが、夜更けとともに悪魔の囁きとなって、眠れぬ母親を空の端が白み始める時間まで悩ましたりする。ロシアの辺境に蔓延る迷信や異端信仰には興味が尽きないものがあるが、理性の堡塁としての家族や共同体が、渺茫たる野蛮の咆哮の前では、風前の灯でしかないことを、本作は赤裸々に抉り出すKEI[投票(1)]
★4ナイト・オブ・ザ・サンフラワーズ(2006/スペイン=仏=ポルトガル)いわゆるラストベルト的な過疎の地方で孤立無援な獲物ばかりを狙って跋扈する連続殺人犯の話は珍しくないが、この人を人とも思わぬ男の薄ら寒さとどん詰まりな状況の閉塞感は鬼気迫るものがある。ピレネーの集落の時間が止まったような佇まいも独特の情趣を棚引かせる。別々の視座から数度に渡って同じ事件の前後談が語り直される構成は、その都度新たな奥行を付け加えるだけでなく、次なる展開の予断を許さないように爪繰られるKEI[投票(1)]
★4スタリー・アイズ(原題)(2014/米=ベルギー)虚栄の都ハリウッドで堕落させられる女優のcautionary taleとしては、後年の『ネオンデーモン』もずっとストレートで迷いがない。またわけがわからん秘密結社ネタが絡むのだが、<敷居>を超えるオーディションの場面でのフラッシュの連射の合間に深まる闇から今にも魔物が出てきそうな気配とか(カーペンター風に)、ヒロインが心身ともに壊れてゆく過程の黏稠性とか(ちょっとアジャーニっぽい)、脳裡に記銘される場面も少なくない [review]KEI[投票(1)]
★3吸血鬼(1957/メキシコ)これも方々で噂を聞くので名前だけは知っていたが、いざ開封してみると大したことなかった部類に入る。タボアーダの経験もあって期待値が上がり過ぎていたせいもあるが、話自体は、レ・ファニュ直系の英国風吸血鬼談をメキシコの田舎に移植しただけだった。ただ、当地の伝統建築というのか、中庭と回廊のある屋敷のセットや、街道筋から本館までえらく離れていて森深い点に風土を感じた。恐怖演出自体は特筆するものはなかったかなKEI[投票(1)]
★4わたしの名はジン(2013/トルコ=独)あれは、たぶん、ISがモスルを占拠して間もない頃だったと思う。ネット上に拡散されて、ちょっとしたブームになった一枚の写真(**)があった。まだ高校生にもならない少女が、カラシニコフを肩から下げて、若い母と小さな妹たちの後ろから半砂漠の道をとぼとぼと歩いている姿。背後が心配で仕様がないのか、振り返った拍子にシャッターが切られ、その瞬間が永遠になった。 [review]KEI[投票(1)]
★5サマ ZAMA(2017/アルゼンチン=ブラジル=仏=スペイン=スイス=米=ポルトガル=オランダ=メキシコ=レバノン)9年のブランクが徒に過ごされたわけでないことを、画面の端々に感じさせる渾身の第四作。セルバンテス、カフカ、コンラッド、バルガスリョサ、雨月、8 1/2、ブンミ翁等々様々な固有名詞が頭を過る。フィクスの画面に周到に配置された人物の間合いが植民地の社会関係だけでなく、単身赴任の役人の精神状態を霊妙に反映しており、先住民の襲撃シーンなど(ブラッド・メリディアン入ってる*)活劇に際しても傑出したセンスを閃かす [review]KEI[投票(1)]
★5真昼の不思議な物体(2000/タイ=オランダ)文明の夜明けに世界各地で見られた神話発生の坩堝を覗き込んでいるようであり、またクノーの「文体練習」に似た言語遊戯が市井の人々に実践されるのに随伴しているようでもある。単一のプレミスの周りで気随気儘に付け足されるのは、各々の人となりと共に生活の息吹きであり、それは、また、様々な表現形態を模索する糸口となる。旅行者が散策がてらに収集したような町のざわめきが、そんな演出家の姿さえ宇内の点景として包み込む [review]ぽんしゅう[投票(1)]