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[コメント] 赤の女王は七回殺す(1972/伊)

相変わらず英米仕込みのミステリマニアには鼻で笑われそうな杜撰なプロット捌きと定番トリックの二番煎じ(ヘタリアの斉唱が聞こえてきそう)。とりあえず最後まで破綻せずに曲り形にも収束を見せるし、ジャーロの基準では割かし体裁が整っている部類に入ると思う。翻って、美女と古城、スプラッターとヌードショーなどの見所は、もはや職人芸の域に達しており、ファンサービスに手抜きはない。
濡れ鼠

なかなか顔が見えそうで見えない赤マントの殺人鬼の幽鬼めいた挙措。薄暗がりに紛れてふらりと登場してはトレードマークの哄笑とともに遠ざかってゆく。これが、また、暗緑の芝や灰褐色の壁を背景に血の滴のように見える。脅威の源泉が、視るものの防衛機制を破って、ぐんぐんと近づいてくるショットの強迫感。このぞくぞくした感じが堪らない。

その前触れとして、深夜の人気の途絶えたサロンや屋敷町の小路坂道、立ちんぼの街娼が犇めく森林公園などの斜めに傾いた俯瞰がある。そして、その危うい均衡に、目の隅から波風立たせる、不祥の翳り。何かが起きそうでなかなか起きない。で、気を抜きかかると、鳥の影のようなものが飛び立って、背後からぐさりとやられる。簡潔だが、今時のどっきり演出よろしく音響頼みでなく、あくまでも画面構成で見せようとするところにイタリア人の絵心を感じさせられる。

地下牢の水責めに先駆けて、脱鼠の群れが排水溝の穴からひとかたまりになって溢れだして来る様など、ゴシックの勘所を押さえた怪奇演出が光る。

(評価:★4)

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