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[コメント] 夜の海辺でひとり(2017/韓国)

最後まで、このすかした女は何者!!?と苛立たせる表面の不透過性と月光病者じみたもたつき/踏外しの重畳。張りをなくした日常の潮目に夢ともまぼろしともつかない異様な光景**が闖入して現実乖離の気配を萌生させる。人を喰った話運びの紆余曲折は、覚束ない足どりで浦淋しい浜辺を遠ざかってゆく傷心女性のくたびれた面影のための前奏だったという闡明。高慢ちきな大女優のマスクを失って、人目から泣きっ面を隠した瞬間だった
濡れ鼠

** 公園で大声であげながらぐんぐんと近づいてくる韓国語話者らしき男の不明瞭なシルエット。二人の女性は悪魔に魅入られたように、行きましょう、と囁き合い、足早に遠ざかるのだった。

**  ハンブルグの浜辺の逍遙の終わりに、帰途につくために集まった友人たちのカットからパンして、反対方向にとり残されたはずのヨンヒを探し求めるキャメラ。不意にどこからともなく現れた男が意識不明らしい女を抱えて立ち去る後ろ姿の幻視で、彼女のモラトリアム外遊はあわただしく幕を閉じる。先の公園の韓国人男を布石として、ちょっと『ポーラX』が入っていて(ピエールの意識の片隅にイザベルが現れてから森の憑依のシーンまで)、非常に好きなくだり。

** 本編中最も異様なのは、ヨンヒの新居となるはずの真新しい物件のベランダで、(まるで自分の姿に気づいてくれといわんばかりに)一途に窓を拭き続ける男のシルエットだろう。その説明不可の存在に対して、部屋のなかにいる者は誰一人として意に介する素振りをみせない。手狭で飾りけのない室内と、全面ガラス越しのバルコニーから見える鈍色の海。いつにもまして捉えどころのないヨンヒの胸中に応じるように、透明なはずの窓ガラスが無意識の鏡面に仕立てられ、画面が2層化される。どことなく、マグリットの超現実的な窓辺の絵を思い起こさせる、位置関係の謎めいた差配。。。。少なくとも欲望の地平に関する限り、夢と日常の交通は陸続きで、もはや恒常的な国境も、峻別しうる領土もないのだという、ホンサンスのマニフェストを突き付けられた感じのする秀逸な場面構成でした。

(評価:★4)

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