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[コメント] 囚われ人 パラワン島観光客21人誘拐事件(2012/フィリピン=仏=独=英)

監督の以前の作品に比べると、自主映画と大手スタジオ映画ぐらいの規模の違いがある。火薬とエキストラの物量において。撮影現場の大がかりさにおいて。そしてその違いに一番戸惑っているのが、メンドサ組一同に思えるのは何故か。時間経過〜位置関係〜群像劇〜どこに起点/支点を置くべきか確たる指針がないので、対テロ戦争の名のもとに太平洋の片隅で一年近くに渡って継続したカオスが何の添木もされないまま緩んで流れ出す。
濡れ鼠

あるいは、彼が描きたかったのは、臨時収入で小舟の新しいモーターを買うというほかは、たいした将来の展望もないまま密林の奥深くに埋もれるようにして生きる者たちと追っ手たちの間で、敵味方入り乱れながら散発的に繰り返される、小競り合いの混沌そのものだったのかもしれない。実際、テロリストと人質/一般市民の区別なく発砲する軍の無軌道ぶりは、今年のマラウィの攻防においてより大規模な武力衝突の形で反復された。千古の昔からの日々の営為の一部のように海域流浪民の末裔によって遂行される略奪、誘拐、強制改宗あるいは隷属、待ち伏せと殺戮、身代金要求と人質の公開処刑。日本軍も散々苦しめられたゲリラ戦の猛者の終わりなき日常。彼の地の自然集落社会では、男子は一人前として認められるために、自分の手で殺めた命の数を数え上げなければならないという(**)。<万人の万人に対する闘争>を地で行くような、外来民の侵入を頑なに拒む熱帯雨林の王国の過酷な現実。この事件当時はアルカイダ、ここ1,2年はイスラム国、アフガン戦争の頃はムジャーヒディーン、それ以前はおそらくパレスチナ、さらに遡ってスペイン艦隊の侵略時代は偉大なるスルタンの名のもとに烏合の衆の結集と、掲げる旗章はその折々変われど、大枠の地政学と辺境民が好む無法者気取りなライフスタイル、一年を通じての言うに言われぬ台所事情は変わらないように思える。。。。

イスラムの教義と山賊・海賊文化のそれほど意外でもない親和性に目から鱗路が落ちる思いがした。

6.5/10

**「海域イスラーム社会の歴史」早瀬 晋三

(評価:★3)

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