冒頭のカーチェイスは『その男、凶暴につき』を思い起こさせるが全体的に暴力演出は勢い頼りで鮮烈さには欠ける。随所で用いられている長回しは緊張とその爆発を捉えるという点において終盤綾野剛の逮捕が決定されペットボトルの水をぶちまけて逃走する一連のシーンが特にすぐれている。

似た場面を繰り返すことでそこに現れる差異から時間の経過による変化を強調する演出。ほぼ同じ構図の中ピエール瀧が座っていた場所に後の場面では綾野剛が座っている、さらに後の場面ではかつてやくざが座っていた場所へ移動している。柔道で他者を圧倒してきた人間が終いには学生相手にすら打ち負かされる。かつてはそうだったのに今はそうではない、この映画は犯罪映画よりも青春映画に近い。