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[コメント] ぐるりのこと。(2008/日)

下ネタ会話をいくつも披露しているにもかかわらず、それが下品に映らないのは、「性」を下品なものと捉えていない監督の考えによるものだろう。ふざけ半分でない真摯な「生きる性」の考え方が根底にあることで、そのぐるりにあることがらと同時に尊いものだと思えるのだ。
jollyjoker

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「ちゃんとしたかった」がために心を病んだ祥子。ちゃんとできずに事件を起こしてしまう人々。その違いは、そばにいて支えてくれる人がいるかどうかなのだろう。涙でぐじゅぐじゅの鼻をふいてくれる人、一緒に天井を見上げてくれる好きな人がそばにいるかどうかなのだろう。人間の関係性を強く意識した秀作。

ちゃんとしたいために、我慢をため込んでうつになってしまった祥子にはカナオがいた。その、どうしていいかわからなくなった祥子を、あきらめずに、とつとつとなだめていくシーンが素晴らしい。「なだめる」というのではなく、受け入れる大きさを感じる演出だ。

「ちゃんとしたかった」がために、といでいるお米を途中でほっぽり出すほど、どうしていいかわからなくなる瞬間は突然に訪れるし、テーブルの脚にくずおれながらも、涙が止まらなくなるのだ。祥子の号泣のシークエンスに引き込まれた。木村多江リリー・フランキーともに素晴らしい。

法廷シーンでの被告・証人の証言シーンを導入したことで、人の内面表現は成功しているとも感じた。成育歴、環境、憎悪、贖罪などを上手く表している。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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