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[コメント] 座頭市兇状旅(1963/日)

冒頭、賑やかな縁日の素人相撲に挑戦して人気者になり、商品の酒を河原でひとりご満悦で呑んでいる市。こういう孤独の滲む断片がとてもいい。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







本シリーズは、どこかで例外にも出会うだろうが、悪役は素晴らしくライバル剣豪は退屈、というパターンがある。ここでも北城寿太郎が類型的で退屈でいけない。一方、安部徹は端々で覗かせる困った顔がとても優れている。二代目披露で市に手に持った徳利(賽子が投げ入れられる)を居合い切りされて狼狽えるショットが抜群。

クライマックスはおかしい。全員斬り倒した後、市は当然、万里昌代の亡骸の処に行って彼女を抱き上げなければならない。これを省いて、作品は万里の一作目からの積み重ねを空中分解させている。ああ、しまった、すっかり忘れちゃったよ、と公開後にスタッフは気がついて卒倒したのじゃないだろうか。いくらラストを村瀬幸子さんで盛り上げても、この欠落が埋まるものではなかった。

成田純一郎の押しつけられたヤクザの二代目は面白く、世の中にこういうことって多いのだろう。小沢幹事長に担がれて「神輿は軽くてパーがいい」と囁かれた海部総理を失礼ながら思い出した。二人はなんとなく似ているのだ。何度もインサートされる物干し台が眩しく、軽井沢夫人のおぼこさも素晴らしい。

(評価:★3)

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