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[コメント] カラマリ・ユニオン(1985/フィンランド)

60年代以降世界で無数に撮られただろう「ゴダールベースの微笑ましい学生映画」の頂点であり、愛さずにいられないし、叩き込まれた才能溢るるアイディアの連鎖は素人には到底手の届かぬもので、嫉妬せずにいられない。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







車のフロントガラスに乗っての逃亡(同じショットで溝からひょっこり手を出す相棒の登場の鮮やかさ)、高級車のトランクのアクション、ウェイトレスにキスしてハンバーガーせしめる件、終盤の特に意味もない自殺他殺の連鎖、どれもこれも抜群である。

私も学生時代は映画部で、学生はこういう映画を撮りたがるものであり、似たような8ミリ映画を何本も観せてもらったものだった(俳優のほとんどが若い男ばっかりという貧しい環境も似ているのだ)。そこではひとつふたつは本作に伍するようなアイディアもあって悦ばせてもらったものだったが、質量とも豊富な本作を観せられると、ああやっぱり名を残す監督は才能が違うわいと、諦めの拍手を送らざるを得ない。

物語の背景に排斥されるコミュニティの主題があるのが深い処で、こんなことは学生にはとてもできない。借景を持ってなされるエクソダスは、序盤の地下鉄は『華氏451』を、後半の海際での焚火は『ストーカー』を想起させる。そしてこの2作目からすでにカウリスマキはラストでエストニアを目指している。移民の主題は『希望のかなた』まで繋がっているのだ。本作のゴダールはアンゲロプロスを通過しているのだった。

映画館でかかっている、女が聖職者を誘惑するサイレント映画は何だろう(お隣のサイレント映画大国だったスゥエーデン製なんだろうか)。ここでも「悲愴」が流れている。

(評価:★5)

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