[コメント] 自殺サークル(2002/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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私にも心当たりがある。園子温もそういう中学生だったに違いない。しかし、これは特殊だろうか。たいていの映画は、この三代噺をオブラートに包んで差し出しているではないか。シリアスな作品において主人公の内省は一方の極で自殺を常に喚起する。ほとんどの映画に美男美女は欠かせないし、ハリウッドSFにパラノイアの妄想みたいな侵略者は欠かせない。
本作はそれらをオブラートなしにリアリズムで明け透けにぶちまけるという方法によって撮られている。倫理観の欠落が挑発的に採用される。決して面白くはないが、何か引っかかる映画だ。それは映画ファンの自己嫌悪を煽るからじゃないだろうか。あんたら愉しんでいるけど本当はこんなものなんだよという悪意たっぷりの挑発。あのエゲツない皮膚を継ぎ接ぎした巻物は、映画のフィルムに似てやしないだろうか。
「あなたとあなたの関係」とはキルケゴールだろう。「自己とは自己自身に関係するところの関係である」。出典が「死に至る病」とはふるっているが、内容は全然関係がない。同じ子供に「あなたはあなたのことしか考えていない犯罪者です」と指摘されて石橋稜は拳銃咥えるのだが、神と実存について問うたキルケゴールは神と自分以外は考慮の外なのだから(こちらの方が過激)。「ここで跳べ」はキルケゴールが目の敵にしたヘーゲルだがさらに関係がない。これはもう、出鱈目で煙に巻いているに違いなく、得体のしれないオカルト描写として観るべきと思う。
だから本作に結末はないだろう。ただ映画の欲望三代噺(スプラッターも加えるべきか)を羅列している。いやあ酷い映画でしたねえ、お口直しをどうぞと云わんばかりにデザートとかいうアイドルに歌わせて幕という収束は人を喰っていて笑ってしまった。結末が出せていないから、自殺と陰謀オカルトは『紀子の食卓』、アイドルは『地獄でなぜ悪い』と続編を喚起するのだろう。
顰蹙覚悟で書けば、一番興味深かったのは校舎の屋上からノリで飛び降りる生徒たちで、群集心理とはこういうものだろうと思わされた。予算がないのは丸判りで、患者の気配のない冒頭の夜の病棟などなかなか情けないものがある。本作最大の不満はさとう珠緒の出し惜しみだが、これもギャラの関係に違いない。ローリー寺西は逮捕されて実名を「鈴木宗男」と報じられるのは何なのだろう。
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