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[コメント] 女囚701号 さそり(1972/日)

死ぬ前に化けて出るお岩さんであり実に純日本的。日の丸をここまでコケにした映画は類例がなかろう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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冒頭の獄内職員表彰式に国歌とともに掲げられる国旗は、梶芽衣子夏八木勲による破瓜の滲みに重ね合わされ、監獄から見る夕日に重ねられ、夏八木の最期に再びはためく。

女囚たちは国旗への敬意を全然強要されておらず、それを示す者もいない。数名の美女を除けばおばはん連中の掃溜め状態であり、それは三原葉子の般若メイクの狂乱で極まっている。

ここから出てくる感想は、日の丸とは特定利害者の利権の象徴、おれっちには関係ねえなあと云うようなものであり、私ら世代の認識と重なる。教育基本法改正以降の愛国教育により、これはもう旧世代の認識になっちゃったのだろう。

伊藤は東映労組の急先鋒だった訳だが、本作の梶の忍従の造形は意外と同じ東映の鶴田浩二の右翼的な立ち居振る舞いに近似している。忍従の果てに自殺しちゃうような女性類型は転覆させられているが、死ぬ前に化けて出るお岩さんだと思えば伝統的なキャラクターであり、黒づくめで闊歩する梶に現代的な『四谷怪談』が見える。

仲沢半次郎は当時並行して深作と『人斬り与太』を撮っていた。キャメラを縦に構える瞬間もあるが、監督が違えばこれほどタッチが異なることになるというのは面白い。シジフォス系の穴掘り拷問を捉えたキャメラが印象的。

(評価:★4)

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