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[コメント] 今年の恋(1962/日)

二三の説明以外全てがギャグの数珠繋ぎ。これはもうホークス・レベル。なんて上手いんだろうのお正月映画。
寒山

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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思い切りお正月映画の軽喜劇。社会問題を全く引っかけない木下作品は珍しい。他には『風前の灯』など思いつくが、本作の出来は突出している。

モテて困る田村正和への集中攻撃、冒頭の野原の喧嘩はじめ同じシチュエーションを繰り返して折り重ねるギャグ、岡田茉利子吉田輝雄の両家で息子の友達が不良だと愚痴り合うカットバック、二人が宴席で合流する余所行きと開き直りの交錯、物語を駆動させる吉田の下心。文章で並べれば基本の応用だけど、ここまで数珠繋ぎにするのは匠の技。岡田・吉田のドライブ最中の会話の処理に至るまで全編を取り仕切るスピード感が愉しく、川島喜劇に伍するハイレベルだ。

三島雅夫だとばかり思っていた三遊亭圓遊(円楽は誤り)の親父が、岡田の弟への説教に茶々入れまくる辺りでギャグの連鎖が喜劇らしい穏やかな世界観に包まれてゆくのがとてもいい。収束は緩いが、企画ものの世界だから、これはもちろん努めてそうしているだろう。松竹移籍後初主演らしい吉田はやや弱いがサンドバッグ役なので構わない。岡田のツンデレはここでも最高である。

社会問題がないと書いたが、無理矢理意味づければ、本作は女中の映画だろう。東山千栄子の田村への怒鳴り返しに始まり、若水ヤエ子の「去年の恋」の愚痴に終わる訳で、彼女らが家の中に倦怠混じりにデンとして、主人と対等以上の関係が取り結ばれているのが強調される。女中が家政婦(契約派遣業)へと変化し始めたのは50年代末頃らしい(若水がそのどちらかは明かされないが)。この待遇改善は、凸ちゃんが住込み用務員で苦労する『二人で歩いた幾春秋』(同年作)の回想と比べて、時代の小さな勝利だと謳っているようで、この背景だからこその気持ちの良い喜劇なのだと思わされる。

(評価:★5)

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