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[コメント] ルードウィヒ 神々の黄昏(1972/独=仏=伊)

後期ヴィスコンティは洋ピンに多大なる影響を与えたのではないだろうか。高貴と頽廃の主題とか、平面的な室内の構図とか、突然のスームインとか。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
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音楽による文化振興と戦争反対は結構な治政であり、国民の人気があったのも頷ける。予算の使い方を知らなかったのは補佐すべき政府や側近の無能でもあろう。下されるパラノイアという診断は治政が上手くいかなかったが故の被害妄想なのだろうし、貴族の近親結婚の弊害とも語られる。ゲイへの無理解はキリスト教への憾み節として描かれる。

ということで、ルードヴィヒ2世を同情的に扱っているのは判るが、それにしても魅力のない人物造形だ。史実だから仕方ないのだろうが、『地獄に堕ちた勇者ども』で強烈だった頽廃は二番煎じの薄味になり、『ベニスに死す』で隠微に輝いていた堕ちて行くのも幸せだよの詠嘆もなく、監督好みの没落へ向けた破綻のない段取り芝居が4時間弱続くだけである。実に生温い。いいなと思ったのはヘルムート・バーガーのお歯黒による狂気の演出ぐらい。

映画は特に前半は殆ど演劇で、複数の人物がたいてい室内でだらだら話すばかり、ワグナーの公演(とってつけたような妻の誕生日プレゼントの演奏シーンは訳判らん)も普墺戦争も、ハリウッドなら絶対描くだろう国民の反応も描写しようとはしない。美術というより美術品ばかり豪華で、こういう予算のかけ方は退屈である。監督の病気のせいなのだろうか。後半は多少改善されるが、それとてロミー・シュナイダーが城の中を延々散歩する観光案内だったりする。こんなシーン、若手監督が撮ったら即お蔵入りだよ。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)KEI けにろん[*]

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