[コメント] パンと恋と夢(1953/伊)
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冒頭の田舎のバスからして清水宏系。映画はデ・シーカのバカ殿のような警察署長着任を通して700人の村を紹介する。村の貧困描写はネオリアリスモだが、艶笑譚の味はこの後流行りまくるイタリア式コメディタッチを先取りしており、その結節点に位置する具合。
村は景気が良さそうに見える。ただ神父だけが危機感を持ち「シシリーでは農民が戦っている」と熱く語るばかり。私の財産はロバだけと語るジーナ・ロロブリジーダ一家はこの好景気に取り残されている。デ・シーカはポンと5000リラ払い、奇跡だと大騒ぎになる。ジーナは巡査と結ばれ、産婆のマリサ・メルリーニもデ・シーカと結ばれる。
総体が村の外から来た警官たちが幸福も連れてきたという話であり、ネオリアリスモ的状況の解決としては実に他愛のないものだ。全体を屯する閑な爺さん婆さんの噂話で引っ張り回し(金持ちの爺さんにくたばれと連呼するような風刺も含まれるが)、噂になってもいいじゃないかと堂々関係を披露するという転覆で話を終える。艶笑譚が全てを解決する実にあっけらかんとした喜劇。こういうのはやはり景気のよさの反映なんだろうか。
ロベルト・リッソの生真面目な巡査は見事な喜劇的人物。ジーナの敵役のマリア・ピア・カジリオのコケティッシュなギャグもいいし、デ・シーカのメイドの婆さんの浪花千栄子的な怪しさも素敵。冒頭に警察と規律に係る注釈が入るが、翻訳が悪いのかもうひとつ意味が判らない。警察など題材にするのは当時の映画ファンにはご法度だったのだろう。
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